出会い・白輝伝
榊達と同行する
つもりだった安住野は
残念そうに言う。

「板倉の車を陣所まで頼む」

板倉より預かっていた
車のカギを安住野の手に
握らせ八才年上の岩代は
にっこりほほ笑んだ。

「いつも岩代さんばかり」

「悔しかったらもう少し
気の鍛練をするんだな
…坊や」

長髪を一つに束ね安住野
より少し大きい岩代は、
年下の封気師を何時も
からかいの種にしていた。

十九才まだ経験の浅い
安住野は反撃する事も
出来ず頬を膨らませていた。
死人は出なかったもの
まだ気が許せないなか
じゃれ始めた二人の頭を
軽く叩き榊は
次ぎの指示を出す。

「アズ・二時間後携帯
に連絡・合流しろ。
川島さん‥私達はこれで」

「あの‥
あれはどうしましょう」

不安気に川島が休憩所の
片隅を示す。そこには
結界石を使い幾重にも
張られた結界の中・
岩代の髪で作った
髪糸に縛られ眠る
妖魔が二体いた。

「あのままでは何も
出来ませんよ。
封印方法が判りしだい
処理しますので、
このまま置いといて
ください。警備の者も
居ますし大丈夫です。
送らせますので川島さんも
病院で板倉より治療を
受け休んでください」

「ありがとうございました
‥どうかよろしく
お願いします」

川島は深々と会釈をした。
榊は近くに居た顔見知りの
警官に手短く現場の指示を
出し病院へ向かう
川島と別れ車に向かった。



< 8 / 60 >

この作品をシェア

pagetop