魔女の報酬
 致命的な炎の一息がロランツの盾となった格好のメディアを襲ったのだ。

 けれども、障壁の呪文が威力を発揮し、メディアは髪一筋も傷つかない。また片目を失っているためドラゴンの狙いが正確ではないことも功を奏していた。

「そんなもの痛くも痒くもないのよ!」

 不敵に宣言すると、メディアは高度を上げながら螺旋状にドラゴンの回りを飛んだ。ドラゴンは薄い皮膜のついた翼を広げ、彼女の後を追うべく地煙を巻き上げて飛び立った。

 メディアは密かにほくそ笑んだ。

 王子とドラゴンを引き離すための陽動に引っ掛かってくれたのだ。おかげで思う存分に力を揮える。

 何しろ、メディアの攻撃魔法は有効範囲が広すぎ、さらに強大なのだ。人間一人など巻き込まれたら一溜まりもない。

 魔法院の院長なぞに言わせると、それは単に彼女が不器用だからということになってしまうが、だからこそ、こういう物騒な相手には威力を発揮するはずだ。

 メディアは氷の剣を空中から数十本も取り出した。蒼色に輝く剣は陽光を弾きながら、ドラゴンを串刺しにせんと風を切って襲いかかった。
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