魔女の報酬
 カキカキカキ。

 氷の剣は、耳障りなかん高い音を立てて、ドラゴンの固い鱗を滑り落ちて行っただけだった。ドラゴンには傷一つついていない。

 ふん、さすがにこの程度では効かないわね。

 一人ごちるメディアにとっても、ほんの小手調べであった。

 片手を空に差し上げると、頭上に暗雲が現れた。その手がドラゴンに向かって振り下ろされる。

 と、暗雲から金色の落雷が、容赦なく幾重にも、ドラゴンに浴びせかけられる。

 しかし、ドラゴンはこれにも平気である。金色の雷光をまとわりつかせたままドラゴンは、再びメディアに向かって炎の息を吹きかけてくる。攻撃のために障壁を解いていたメディアは、慌てて回避する。髪の焦げるいやな臭いがした。一瞬、恐怖に肌が粟立った。

 メディアは顔をしかめ、口びるを引き結ぶ。

 これなら、どう!

 猛吹雪がドラゴンを強襲した。さすがのドラゴンもこれには閉口したらしく白く凍りかけた。

 ほら、みなさい。

 と、メディアが喜べたのは束の間だった。ドラゴンが翼を一振りし、身体を震わせると、鱗の上に張りつめた氷が砕け、きらきらと輝きながら剥がれ落ちていった。

 なんて奴!

 心中で罵りながらメディアは次の呪文を唱える。ドラゴンに炎の息を吐かせる暇を与えるわけにはいかない。

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