魔女の報酬
 くるくると変わる表情は、見ていて飽きない。遠慮を知らない直載な物言いは、いっそ小気味がいい。頭の回転もはやいし、ましてそれを隠して必要以上に愚鈍に見せかけようという女性特有の計算高さもない。

 要するにロランツは、この赤毛の魔女に魅入られてしまったらしい。

(これも運命なのかもしれないな)

 后の座なんて、かの女が本気で言ってないことだけは確かだった。ただロランツを困らせたいがためだけに、そんな要求を突きつけてきたのだろう。

 そんなところを見れば、残念ながらかの女は自分によい印象を抱いてないようである。だから、こんな機会を逃したら、気の強いかの女を落とすのは難しい。それに、思惑をはずされたかの女の顔を見てみたい気もした。

 ロランツは片手をあげると晴れやかな顔でこたえた。

「そんなもので良いなら、喜んで君にあげるよ」

「えっ!」

 メディアは驚きを隠そうともしなかった。

「な、何も無理しなくていいのよ」

「無理などしていないよ。わが未来の妻よ」

 ロランツは、メディアの側によると手をとった。その小さな手はかれの掌にすっぽりと収まる。

「ちょっと!」

 メディアは反射的に振りはらおうとしたが、ロランツは力を入れて離さない。彼は、自分の胸ほどもない小柄なかの女を上から覗き込む形になる。

「力を貸して欲しいのだ」

「わ、わかったわよ。だから、手を離してよ」

 真っ赤になってうろたえるメディアはたとえようもなく可愛くて、できるものなら一生、手を離したくなかった。



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