芸大生恋物語
「今の人、知り合い?」


オレが翔平さんの肝臓や単位の履修状況に冥福を祈っていると、裏でファーストフードを作っていた佐藤恵子ちゃんに声をかけられた。

恵子ちゃんは高校を中退してこのコンビニで働く勤労少女で、新人の頃は大変お世話になった元気一杯の看板娘だ。


「そーそー。サークルの先輩」
「え!?30代だと思ってた!」


オレも初見ではそう思った。


「いや、たしかに年食った生徒さんもいるにはいるけど、あの人はバリバリの現役生だよ」
「信じられない。いつもお酒ばっかりすごい量買っていくから、てっきり…」
「まあたしかにあの量はおかしいよね」


オレは改めて翔平さんの肝臓と単位の履修状況に冥福を祈った。

今度は肝臓を重点的に。


「大学ってあんなのばっかなの?」
「あんなのばっかだったらオレはもう学校辞めて田舎に帰ってるよ。あの人は特別」


オレもだが客にあんなのって言い方はどうなんだろうか。


その後オレは恵子ちゃんに宏先輩の持つ無茶苦茶な武勇伝などを話しつつ業務に励み、朝方に終業し、家に帰って夕方まで眠った。

目が覚めたオレは自分の単位の履修状況にも冥福を祈ったのであった。
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