芸大生恋物語

みのり事変

「なんで学校来ぇへんの!!」


目が覚めたら目の前でみのりが仁王立ちしていた。

寝起きでよく聞き取れなかったのでもう一回。


「だから!なんで学校に来ぇへんのよ!!」


ああそうね学校学校。


「いやもう留年したし。選択の方には出てるよ」


芸大生の授業には二通りある。

一つは作品制作などの必修授業。

もう一つはそれ以外の座学などの選択授業だ。


基本的に必修授業は固定で二、三ヶ月に一度作品を作り、教授や同期生の前でプレゼンテーションをし、批評してもらう。

俗に合評と呼ばれるものだ。

これは年単位でどれだけ単位を取らなければならないか決まっており、取れないとアウト。即留年決定である。

ちなみにオレが落としたのはこれだ。


選択授業というのは卒業までに取得しなければならない単位数が決まっており、複数ある授業から任意でいくつかを選択し、卒業までにせこせこ取り続ける授業のことである。

これは年にどれだけ取らなければいけない等の決まりはないが、だからといって取るのをサボっていると卒業間近に単位不足で泣きをみることになる。

さらにいうとオレはこっちの方も足りていない。

すでに涙目だ。


「それでも教室にくらい来てくれてもええやん!!」


みのりはなぜか怒っている。

それもボルテージはマックスギリギリだ。

なぜだ。たしかにここ二週間みのりにはとんと会っていなかったがそれは教室にいかなかったことだけが問題ではないように思う。

学校自体には行っていたのだから、狭い校内当然道でばったりやあおはようするくらいのことはあった方が自然だ。

食堂で会うことだって十分考えられる。

まあ二週間は長いか短いかで言えばう~ん微妙と言える期間だ。

偶然一度も出会わなかったとしてもまあ不思議ではない。のだろうか?


ちょっと待て、論点がずれてきている。

問題なのはなぜみのりと出会わなかったかではなく、なぜみのりが怒っているのかだ。

あれ?それってオレとなかなか会えなかったからじゃなかったか?

じゃあ論点はあってるのでは?

ん?

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