芸大生恋物語
「ん…」


ベットに目をやるとみのりが目を擦っていた。

どうやら目が覚めたようだ。


「あれ?うち…」
「起きたか寝坊助」
「先輩もさっき起きたくせに」
「おまえコンクリート詰めになって日本海で発見されろよ」


半覚醒らしいみのりは瑛太を見た瞬間、布団を手繰り寄せ、瑛太に不躾な視線を送り続けている。

警戒心剥き出しである。


「オレ嫌われちゃいました?」
「底意地の悪さが滲み出てんじゃねえの?」
「こんな爽やかボーイを捕まえて何言っちゃってるんですか」
「言ってて虚しくないか?」
「少し」


瑛太のアホさ加減を再確認している間にみのりは完全に目を覚ましたようである。


「だれ?」
「サークルの後輩のアホ。気にしなくていい。空気と思え」
「せめて名前くらい言ってくださいよ」


瑛太と漫才を繰り広げてみても、みのりの警戒心はあまり落ちた様子はない。

瑛太は見た感じヤンキーというかホストというか、その中間のような頭の悪い格好をしているので、第一印象はすこぶる悪いことが多い。

実際はただの性欲狂いでチンピラのアホなのに。

あれ?ダメじゃん。


「なんでおるん?」
「知らん。なんでいるんだおまえ?」
「いや言ったじゃないっすか!ヒマつぶしにメシたかりに来たんすよ!」
「だとさ。ただの善良なチンピラだからあんまり怯える必要はないぞ。ただ絶対に二人きりになるなよ」


余計怯えた。


「あたりまえでしょうが!」
「うぅむ」


本心なのに。
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