芸大生恋物語

サークルの日常

うちの大学のサークル棟は、別名スラム街と呼ばれている。

いたる所にある落書き、ボロボロのよくわからん旗、テレビやら冷蔵庫やらの廃棄物。

極めつけはこれだ。


「おう、よー来たな。まあ飲めよ」


そうここはスラム街、一種の治外法権。

この中では真昼間っからの飲酒が平然と行われているのだ。


「ありがとうございます。いただきます」
「駆けつけや!イッキイッキ!」


どの角度から見ても明らかにその道の人な先輩に日本酒を注がれる。

なぜか器は丼鉢だ。


「そおれイッキイッキ!」


なぜか先輩はイッキコールのリズムに合わせて脱ぎ始めている。


「イッキ!イッキ!」


他の人達も男は全員脱ぎ始めた。

先輩はすでに全裸だ。


「イッキ!イッキ!」


この場にいる男で服を着ているのは必死で日本酒を飲み干そうとしているオレだけになった。


「うぉらい!!」
「おぉぉぉぉ」


飲み干した。

焼酎じゃなくてよかった。

日本酒はまだ飲みやすいほうだ。

サークルに入った当初は連日繰り広げられる酒盛りと強面の先輩たちにビビリまくっていたが、どれも日が経てば慣れてきた。

オレが慣れるまでに一緒にサークルに入った同期は半分になっていたが。
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