芸大生恋物語

大学生のバイト事情

「いらっしゃいませ、こんばんわ!」


挨拶はハキハキと元気な声で伸ばさずに。

それがオレのポリシーだ。


「レジフォローお願いします!」


しかしレジ打ちは苦手だ。



オレは大学の近くのアパートで部屋を借りて生活している。

家賃はおもに奨学金から出てる。

大学に進むのを決めたとき、すでに働いてる兄貴に


「大学行って4年で巨額の借金背負うか、大学行かずに4年間働いてそこそこ貯金するのかどっちがいいかよく考えろ」


と言われたが、全くもってそのとおりだと思う。

少なくともオレは卒業後に借りまくってる奨学金を返すために、馬車馬のように働かなくてはならないだろう。

今から気が重くなる話だ。さらに留年で借金がかさむ。


しかしながら大学生というものはいくら金があっても足りないものだ。

友達との遊興費、サークルの飲み会代、さらに芸大生ならではの支出「制作費」。

これらを捻出するのに仕送りだけではもちろん足りず、下宿先から程近いコンビニでバイトに精を出す毎日である。


大学生のバイト、特にコンビニとなると夜にやることが多い。

日中は授業などがあって働けないという事情もあるが、基本的にコンビニバイトは夜と昼とで天と地ほどの時給の差があるのだ。

さらに夜は基本的に客が少ない。

それはそれで品出しや商品が届いたりと色々とやることがあるのだが、やはりコンビニバイトの主なストレスの第一位は偏屈な客の対応なのだ。

最近の若者は、などと大人はよく言うが、その実煩わしいというものは大概にして老人や中高年が多い。

もちろん若者の嫌な客もいるにはいるが、やはり態度のデカさや欝陶しさなどで非・若者が圧倒的に勝る。

時給が千円にも届かぬ身にいったいどこまでのサービスを求めているのやら。


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