鬼殺し
俺達、なんでこんな所にいるんだっけ……

仁史は対面の壁に背をもたせかけて目を瞑っている男を見た。

「意識が戻ったか……」

「冬耶〈トウヤ〉……?」

彼はほっそりと目蓋を持ち上げて仁史の顔を見た。

ぐしゃぐしゃの茶髪が顔を覆い、血の気のない顔がいつもの冬耶とは別人に見えた。

「この入り口に二体の死体が転がっている。

だが、絶対に見ちゃいけない」

そう言って冬耶は自分の黒皮のジャケットの端をぎゅっと掴んだ。

「死体……?」
< 2 / 74 >

この作品をシェア

pagetop