鬼殺し
「なぁ、冬耶」

今度は仁史が冬耶を見つめる。

「俺、結局……殺しちまったよ。
雅人を、『見殺しに』した……」

仁史はきつく下唇を噛んだ。

「初めから雅人を鬼にして殺すつもりだったのに、俺……何言ってんだろうな……」

「違うんだ仁史!」

急に冬耶が仁史の肩を掴んで、揺すりだした。

「お前は最後まで雅人の救出に向かおうとした。
止めたのは俺だ!

あのままじゃ、仁史も雅人も二人とも助けられなかった。

最後の選択だったんだよ……」


「はいはい、言い逃れは結構。
ともかくやっとゲームらしくなってきたわ」

女々しく震えている仁史と冬耶を余所に、また詩織は淡々とした言い回しで水を濁してきた。
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