ダイヤル
プロローグ
あたしには大切な人がいる。
彼もあたしを大切に思ってる…と思う。
でなければ二人出会った
意味がないから。
あたしたちは初めから
お互いを知りすぎてた。
でも、もしかしたら本当は、
知らなすぎたのかも知れない。
―あたしたちはお互いを
南京錠の片割れみたいに思ってた。
片方失くなれば
片方は意味をなさない。
閉じられたかぎは
うまく開くことはない。
針金で無理矢理開けても
傷がつくだけ。
見えないところに
細い傷がつくだけ。
だからあたしたちは
お互いを失いたくなかった。
いや、失っちゃいけなかったんだ。―