隠れ鬼ごっこ
「いやぁ、びっくり仰天だよ!まさか…助け合うどころか、餌にするなんてさ♪これだから人間をゲームに誘うのはやめられない…♪」

「てめぇ……!」

楽しそうに話すピエロに対し、睨み付けて言うがピエロは全く動じない。

「あー、ソウソウ。それに比べて昴君は…まぁ、立派な人間だったよ?何せ、お友達を助ける為に身代わりになったんだからさ♪だから…ズタボロだけど僕のお人形にしたよ★」

「人…形?」

「そっ♪アッチコッチに傷はあるけど…今から血を抜いてヒ素でも注射するヨ。腐らないようにネ!」

「ふざけんな!昴を殺しておいて…その体も弄ぶ気か!?」

「ナンデ?だって“落ちてた”んだよ?だったら、拾った僕の勝手でしょ?それに僕は殺してないシ?」

「このっ…!」

「だ、駄目だよ!怜!」

カッとなって殴りかかろうとした俺を雅明が止める。

そう。このピエロはきっと鬼並みに強い。もしかしたら、それ以上強いかもしれない。

雅明はそれを分かって俺を止めた。

「――フフッ♪君はお友達のことになると…カッとしやすいネ?怜クン。まぁ、殺しはしないヨ、僕はね。それじゃあ…つまらないから」

ニタリと笑うピエロの笑顔に寒気を感じた。

「クククッ…次は拓海クンがあの女の子達を陥れる番ダ♪君に止められるかナ?怜クン」

「――止めてやる!アイツにそんなことなんかさせない!!!」

「怜……」

怒鳴り付けるように、俺はピエロに言った。

そんな俺にピエロは目を丸くしていたが、やがてまたニタリと笑い「クククッ…それは楽しみだネ。じゃあ、僕は見学しにいくヨ。…この面白いショーをネ♪」と言って、指を鳴らした。

すると、出てきた時のように紫の煙が奴をくるみ、奴は消えていった。

「…っ!」

俺は歯軋りをしながら、近くにあった机を蹴って、片手で顔を覆った。

「怜…」

雅明の心配そうな声が耳に届く。

俺は友達を1人失った悔しさと、怒りで回りが見えていない拓海のことで考えた。

「……止めないと。アイツを…あのピエロを楽しませる道具になんかさせない」

深呼吸をしてから、俺は片手を顔から離した。

「――うん。そうだね。僕も行くよ。拓海は…友達だから」

そう言って、雅明は悲しそうに笑った。

「……私も連れて行って下さい。元はと言えば私の友人のせいでこうなったので」

麻里はそう言って俺を見た。

「――あぁ、2人共ありがとう。…行こう。これ以上犠牲者が増える前に」

俺はそう言うと、部屋を出た。

――昴。

そして、歩きながら友人のことを思い出す。

色々あったけど…今まで楽しかった。

お前が、助けた拓海の命…絶対に復讐の為なんかに使わせないから。

だから……見守っててくれ。


――どうか安らかに。

俺はそう祈ると、走った。
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