隠れ鬼ごっこ
―怜 Side―

「っ…!」

鬼は確実に絵里の方に向かっているのに、その殺気からか全く動けない。


「いっ、いやぁぁ!たっ…!助け…助けて…!み…さき…!」

絵里は必死に彼女の名前を呼んだ。

誰もが同情してしまうそんな状況だった。


「………」


しかし、彼女はそんな友人を暫く眺めた後……


「……うざっ」

「えっ…?」

低い声でそう言った彼女に聞き返す。

すると、彼女はほくそ笑みながらこうい言った。

「美咲、美咲って…金魚のフンみたいにアタシについてきて…いい加減うっとうしいんだよ」

「!」

彼女が言ったその一言に誰もが唖然とした。

「そっ、そんなっ…!私はただ…」

「第一さ、アンタのことなんて友達だと思ったことないんだねぇ。金魚のフン。まぁ、アンタはアタシのこと友達だと思ってんでしょ?だったら死んでよ。…アタシの為に」

「てめえ!」

誰よりも先に拓海が大声をあげた。


「何よ。アンタもそいつに殺されなさいよ」

「てめえ、ふざけんなよ…!てめえの友達は…今なら助けられるんだぞ!?助けられる友達を見捨てるのかよ!!」

怪我をして、そんな元気もない筈の拓海はありったけの大声でそう言った。

そう。さっき、拓海は大事な親友である昴を助けられなかったのだ。

一緒に居たのにも関わらずに、そんな行為に走る美咲が許せなかったのだ。

しかし……。

「……だから?つーか、友達だって思ってないって言ったでしょ?頭悪いんじゃない?」

面倒臭そうに彼女はそう言った。

「そんな!あんまりだよ、美咲!」

今度は麻里が彼女に必死に伝えた。元は同じグループで共にしていた仲間なのだ。

「うるさいわねぇ、麻里。…アンタも奈緒も由美みたいにそいつに殺られれば良いのよ。その間…アタシが安全なところまで行くまでの時間稼ぎになってよね」

彼女にはもう何も伝わらない。
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