隠れ鬼ごっこ
「あっ………」
雅明が震えながら鬼を見た。
鬼はゆらりとこっちを見た。
その顔には…笑顔。
血にまみれたその体がこちらを向く。
誰も恐怖で動けない。
「は…離せっ!」
美咲は慌てて拓海を蹴る。
しかし、いくら蹴っても相変わらず拓海は離そうとしない。
「くっ……誰が、離すか…!」
歯を食いしばりながら、拓海は足を掴む。
「拓海!」
怜は拓海の名を呼んだ。拓海は美咲を掴んだまま離すまいと抵抗しているだけだった。
その間、鬼はヒタヒタと、2人の方へ近付いてくる。
「いや…!く、来るな…化物…!」
左右に首を振りながら美咲はうわごとの様に呟く。
だが、鬼はそんなことを気にせず確実に近付いてくる。
ふと、麻里と美咲の目が合った。
「た、助けて、麻里!アタシ…まだ死にたくない!助けてよぉ!麻里!」
「友達でしょ!?」と、あれだけ罵倒した麻里に助けを求める美咲。
「み…さき…」
麻里は辛くなった。もちろん、死んで欲しいわけではない。でも…絵里と由美を見殺しにして…奈緒と私を置いて行った張本人だ。
お陰で、奈緒とは離ればなれ。
その上…あれだけ美咲を信じていた絵里を、まるでゴミを捨てるかのように見捨てた美咲を…助ける気にはどうしてもなれなかった。
「麻里!?ねぇ、助けてよぉ…!」
「あ…わた…し…」
美咲の声に気持ちが揺るぐ。私だって…もう誰にも死んで欲しくなんかない。
でも…どうしたら良いのか分からないよ…!
中々、動かない麻里に、美咲は怒鳴り始めた。
「アンタ、私を見捨てる気!?ふざけんじゃないよ!誰が、アンタみたいな冴えない子と一緒に居てあげたと思ってんの!?この、クズ!助けろよ!」
今度は罵声を浴びせる美咲に誰もが呆れた。
拓海に至っては、目を大きくさせ、歯ぎしりをしていた。
「…!」
雅明が拳に力を入れた。
「このブスが!早く助けろって言ってんのが――「ふざけてんのは貴女でしょう!?」
拓海が怒鳴ろうとした時、美咲の言葉に被せて怒鳴り声をあげたのは…雅明だった。
「雅…明?」
怜が呼びかける。なんせ、雅明の怒鳴り声なんて聞いたことがなかった。
「貴女は自分が生き残れればそれで良いんですか!?さっきの子だって…貴女を信じていたのに!それに…散々他の人達を裏切っておいて今度は、麻里さんに助けを求めるんですか!?で、助けなければクズやブス呼ばわりですか!?それに…誰が冴えない子ですか!?居てあげた!?そんな、偉そうに居てあげたみたいな言い方して…貴女は友達って何か分かってます!?そんなの…そんなの友達なんかじゃない!ただの“暇つぶし”の道具ですよ!!!」
鬼を目の前にし、尚、あんなに優しい雅明がそんなことを言うなんて怜には信じられなかった。
しかし、その言葉には何処か説得力と重みが違った。
「何を偉そうに…!アンタだって、同じようなもんでしょ!?アンタたちのグループで…アンタは冴えない異質の子じゃない!アンタだって、そいつらに利用されてんのよ!」
「!違う…!!!僕は…!怜はそんな風には…!」
美咲のその言葉に雅明は一瞬たじろいだ。
左右に首を振りながら、言い返す。
「何を根拠に…!アンタ、自分の姿をよく見てみなさいよ!アンタらのグループで浮いてるじゃない!何も違わないわ!アンタはそういう人間よ!」
「ちが…!「違う!!!」
今度は怜が、声をあらげた。
「雅明の…俺等のことを知りもしないくせにそんな勝手なこと言うな!雅明は友達だ!道具でも、なんでもない!アンタと俺等は違う!!だから、昴は拓海を助けて、拓海は俺等を救おうとしてるんだ!!お前みたいな奴と俺等を一緒にすんなっ!!!」
「怜…」
パニックになりかけていた雅明が怜を見る。
俺等は鬼がそこに居るのも忘れ、そんなことを話していた。
そんなことを話している状況ではないのは頭でよく分かってる。
でも、どうしても許せなかった。
雅明を罵倒してきたのが。
雅明は大切な友達。
確かに俺等のグループでは異質なのかもしれない。
でも、俺は雅明が居て、昴が居て、拓海が居て、文太がいる…この関係が好きだった。
いつだって、バカを言う文太や拓海、悪のりする俺と昴を止めてくれる雅明。
それで成り立って、いつだって楽しかった。
今はもう昴は居なくなってしまった。
それでも…友達なのには変わらない。
だから、押さえられなかった。
雅明が除け者だと言う美咲が。
「はっ、バカみたい!とにかく、離せ…!あたしはこんなとこで――」
美咲がまた暴れだそうとした時には、鬼は真後ろに居た。
「!!!!」
美咲が恐る恐る鬼を見ると、鬼は美咲の右手を掴み…
――バキッ!
「!?」
折り砕いた。
「ひっ…!いやあぁぁぁ!!!!」
美咲の恐怖と痛みが混じった悲鳴が響き渡った。
「い…痛いぃぃ…!」
痛みに泣き叫ぶ美咲だったが、鬼はそれを無視し、今度はもう片方の腕を折り曲げた。
――ボキィ!
「あああぁぁああぁ!痛い、痛い、痛いぃぃぃ!」
痛みに倒れた美咲に鬼は構わず、あちこちを折り始めた。
雅明が震えながら鬼を見た。
鬼はゆらりとこっちを見た。
その顔には…笑顔。
血にまみれたその体がこちらを向く。
誰も恐怖で動けない。
「は…離せっ!」
美咲は慌てて拓海を蹴る。
しかし、いくら蹴っても相変わらず拓海は離そうとしない。
「くっ……誰が、離すか…!」
歯を食いしばりながら、拓海は足を掴む。
「拓海!」
怜は拓海の名を呼んだ。拓海は美咲を掴んだまま離すまいと抵抗しているだけだった。
その間、鬼はヒタヒタと、2人の方へ近付いてくる。
「いや…!く、来るな…化物…!」
左右に首を振りながら美咲はうわごとの様に呟く。
だが、鬼はそんなことを気にせず確実に近付いてくる。
ふと、麻里と美咲の目が合った。
「た、助けて、麻里!アタシ…まだ死にたくない!助けてよぉ!麻里!」
「友達でしょ!?」と、あれだけ罵倒した麻里に助けを求める美咲。
「み…さき…」
麻里は辛くなった。もちろん、死んで欲しいわけではない。でも…絵里と由美を見殺しにして…奈緒と私を置いて行った張本人だ。
お陰で、奈緒とは離ればなれ。
その上…あれだけ美咲を信じていた絵里を、まるでゴミを捨てるかのように見捨てた美咲を…助ける気にはどうしてもなれなかった。
「麻里!?ねぇ、助けてよぉ…!」
「あ…わた…し…」
美咲の声に気持ちが揺るぐ。私だって…もう誰にも死んで欲しくなんかない。
でも…どうしたら良いのか分からないよ…!
中々、動かない麻里に、美咲は怒鳴り始めた。
「アンタ、私を見捨てる気!?ふざけんじゃないよ!誰が、アンタみたいな冴えない子と一緒に居てあげたと思ってんの!?この、クズ!助けろよ!」
今度は罵声を浴びせる美咲に誰もが呆れた。
拓海に至っては、目を大きくさせ、歯ぎしりをしていた。
「…!」
雅明が拳に力を入れた。
「このブスが!早く助けろって言ってんのが――「ふざけてんのは貴女でしょう!?」
拓海が怒鳴ろうとした時、美咲の言葉に被せて怒鳴り声をあげたのは…雅明だった。
「雅…明?」
怜が呼びかける。なんせ、雅明の怒鳴り声なんて聞いたことがなかった。
「貴女は自分が生き残れればそれで良いんですか!?さっきの子だって…貴女を信じていたのに!それに…散々他の人達を裏切っておいて今度は、麻里さんに助けを求めるんですか!?で、助けなければクズやブス呼ばわりですか!?それに…誰が冴えない子ですか!?居てあげた!?そんな、偉そうに居てあげたみたいな言い方して…貴女は友達って何か分かってます!?そんなの…そんなの友達なんかじゃない!ただの“暇つぶし”の道具ですよ!!!」
鬼を目の前にし、尚、あんなに優しい雅明がそんなことを言うなんて怜には信じられなかった。
しかし、その言葉には何処か説得力と重みが違った。
「何を偉そうに…!アンタだって、同じようなもんでしょ!?アンタたちのグループで…アンタは冴えない異質の子じゃない!アンタだって、そいつらに利用されてんのよ!」
「!違う…!!!僕は…!怜はそんな風には…!」
美咲のその言葉に雅明は一瞬たじろいだ。
左右に首を振りながら、言い返す。
「何を根拠に…!アンタ、自分の姿をよく見てみなさいよ!アンタらのグループで浮いてるじゃない!何も違わないわ!アンタはそういう人間よ!」
「ちが…!「違う!!!」
今度は怜が、声をあらげた。
「雅明の…俺等のことを知りもしないくせにそんな勝手なこと言うな!雅明は友達だ!道具でも、なんでもない!アンタと俺等は違う!!だから、昴は拓海を助けて、拓海は俺等を救おうとしてるんだ!!お前みたいな奴と俺等を一緒にすんなっ!!!」
「怜…」
パニックになりかけていた雅明が怜を見る。
俺等は鬼がそこに居るのも忘れ、そんなことを話していた。
そんなことを話している状況ではないのは頭でよく分かってる。
でも、どうしても許せなかった。
雅明を罵倒してきたのが。
雅明は大切な友達。
確かに俺等のグループでは異質なのかもしれない。
でも、俺は雅明が居て、昴が居て、拓海が居て、文太がいる…この関係が好きだった。
いつだって、バカを言う文太や拓海、悪のりする俺と昴を止めてくれる雅明。
それで成り立って、いつだって楽しかった。
今はもう昴は居なくなってしまった。
それでも…友達なのには変わらない。
だから、押さえられなかった。
雅明が除け者だと言う美咲が。
「はっ、バカみたい!とにかく、離せ…!あたしはこんなとこで――」
美咲がまた暴れだそうとした時には、鬼は真後ろに居た。
「!!!!」
美咲が恐る恐る鬼を見ると、鬼は美咲の右手を掴み…
――バキッ!
「!?」
折り砕いた。
「ひっ…!いやあぁぁぁ!!!!」
美咲の恐怖と痛みが混じった悲鳴が響き渡った。
「い…痛いぃぃ…!」
痛みに泣き叫ぶ美咲だったが、鬼はそれを無視し、今度はもう片方の腕を折り曲げた。
――ボキィ!
「あああぁぁああぁ!痛い、痛い、痛いぃぃぃ!」
痛みに倒れた美咲に鬼は構わず、あちこちを折り始めた。