隠れ鬼ごっこ
「雅明!!雅明!!!」
何度も友達の名前を呼ぶが扉は全く開く気配を見せない。
「お願いだ…開けてくれよ……」
弱々しく怜は扉に額をつけながら呟いた。
「ごめんね」
「!」
ようやく聞こえてきた友達の声に顔を上げる。
「雅明…!」
「…僕ね。ずっと寂しかった。中学生の頃はいじめられてて…家に帰っても父さんも母さんも仕事で忙しくて殆ど居なかったし。もし高校に行って…寂しかったら僕はこのまま引きこもってようと思ってたんだ。これが最後のチャンスだってね」
「……」
寂しそうな声に鬼が来ていることも忘れて怜は聞いていた。
「そんな時だった。…怜が声を掛けてくれたのは」
目を瞑りながら雅明は微笑みながら額を扉につけた。
ーーー1年前。Bクラス
ガヤガヤと周りに友達ができ始めている中、僕はまた誰とも話せていない。
話しかけたいが…やはり怖い。
中学生の頃は根暗とか変なこと言うとか…誰かを呪ってるんだろだとか…色々な事を言われていじめられていた。
たしかに僕も悪かったと思う。
勘が鋭いからって盛り上がっている時に嫌なこと言ったり…みんなが知っている流行のものを見ようともしなかった。
今思い返せば感じの悪いことばかりしてたから。
それでも暴力だけではない、暴言という見えない刃物は僕の心をズタズタにするのには充分だった。
その傷が深すぎて…これ以上傷つきたくないという自己防衛反応が出てしまって、話かけることが心臓が飛び出すほどの拒否反応が出てしまっていた。
俯いて動けない僕の耳にまた刃物が突き立てられる。
「…ねぇ、あの子凄く暗くない?」
「顔は可愛い感じだけど…ねぇ?」
「俺あーゆー奴無理」
「俺も。話できねえもん」
ぎゅっと拳を握りしめた。
…もう駄目だ。
今日でここに来るのはやめよう…。
ハハッ…。
あわよくば高校デビュー出来ればなんて夢のまた夢だったんだ。
潤んできた瞳を瞑り机に突っ伏した時だった。
「ーーなぁ。お前どこ中?」
「!」
顔を上げて声の方を見るとそこには紺のカーディガンを着た男子生徒が僕の机に半分座りながら覗き込んでいた。
「え、ぼ、僕?」
「そうだよ。他に誰がいんだよ」
「み…南中」
「おっ、近いな。俺は南西中だ」
南西中学校といったら不良が多いと噂高い中学校であった。
目の前にいるこの人はそう見えないけど…もしかするとからかわれてるのかな…。
そんな後ろ向きな考えはよそに目の前の人は思い返したようにあっと声を上げた。
「そうそう。名前すら言ってなかったな。俺は遠藤 怜。お前は?」
嘘…。
珍しい苗字ではないけどまさかそんなことがあるなんて…。
それに同年代に名前を聞かれたのが久しかった僕は怖いの反面、喜びの気持ちを抑えながら自分の名前を言う。
「雅明。…遠藤 雅明」
それを聞いた遠藤くんは驚きながらも「なんだ同じ苗字か。どうりで後ろの席だと思ったよ」とはにかんだ。
その笑顔と窓の太陽光が反射して遠藤くんが輝いて見えた。
それが初めの出会い。
他愛のない話をしながら彼は一緒に帰ろうと言ってくれた。
「やっと終わったー」
遠藤くんは背伸びをしながらだるそうに歩いていた。
「そうだね。あはは」
久々に笑っている気がする。
でも…気は抜けない。
また変なことを言ったら…1人に逆戻りだ。
それだけは避けたい。
「なんか緊張してる?」
「へっ!?」
図星を突かれ思わず声が裏返る。
駄目だ。ボロが出ないようにしないと。
「そ、そう?そんなことないよ?」
「嘘つけ。声裏返ってるし、どもってんじゃん。…あー、もしかして俺怖い?視力下がってきてて見えづらいから目を細めるからさ。睨んでるように見える上に南西中だからよく言われるんだよな」
「そっそんなことないよ!でも僕はーー」
勢いで本当の事を言おうとした時だった。
「ーーあれ?お前遠藤?」
ビクッ
後ろから聞こえてきた声に思わず体硬直する。
震える体を無理に動かして後ろを振り返るとそこには中学校時代の同級生がいた。
何度も友達の名前を呼ぶが扉は全く開く気配を見せない。
「お願いだ…開けてくれよ……」
弱々しく怜は扉に額をつけながら呟いた。
「ごめんね」
「!」
ようやく聞こえてきた友達の声に顔を上げる。
「雅明…!」
「…僕ね。ずっと寂しかった。中学生の頃はいじめられてて…家に帰っても父さんも母さんも仕事で忙しくて殆ど居なかったし。もし高校に行って…寂しかったら僕はこのまま引きこもってようと思ってたんだ。これが最後のチャンスだってね」
「……」
寂しそうな声に鬼が来ていることも忘れて怜は聞いていた。
「そんな時だった。…怜が声を掛けてくれたのは」
目を瞑りながら雅明は微笑みながら額を扉につけた。
ーーー1年前。Bクラス
ガヤガヤと周りに友達ができ始めている中、僕はまた誰とも話せていない。
話しかけたいが…やはり怖い。
中学生の頃は根暗とか変なこと言うとか…誰かを呪ってるんだろだとか…色々な事を言われていじめられていた。
たしかに僕も悪かったと思う。
勘が鋭いからって盛り上がっている時に嫌なこと言ったり…みんなが知っている流行のものを見ようともしなかった。
今思い返せば感じの悪いことばかりしてたから。
それでも暴力だけではない、暴言という見えない刃物は僕の心をズタズタにするのには充分だった。
その傷が深すぎて…これ以上傷つきたくないという自己防衛反応が出てしまって、話かけることが心臓が飛び出すほどの拒否反応が出てしまっていた。
俯いて動けない僕の耳にまた刃物が突き立てられる。
「…ねぇ、あの子凄く暗くない?」
「顔は可愛い感じだけど…ねぇ?」
「俺あーゆー奴無理」
「俺も。話できねえもん」
ぎゅっと拳を握りしめた。
…もう駄目だ。
今日でここに来るのはやめよう…。
ハハッ…。
あわよくば高校デビュー出来ればなんて夢のまた夢だったんだ。
潤んできた瞳を瞑り机に突っ伏した時だった。
「ーーなぁ。お前どこ中?」
「!」
顔を上げて声の方を見るとそこには紺のカーディガンを着た男子生徒が僕の机に半分座りながら覗き込んでいた。
「え、ぼ、僕?」
「そうだよ。他に誰がいんだよ」
「み…南中」
「おっ、近いな。俺は南西中だ」
南西中学校といったら不良が多いと噂高い中学校であった。
目の前にいるこの人はそう見えないけど…もしかするとからかわれてるのかな…。
そんな後ろ向きな考えはよそに目の前の人は思い返したようにあっと声を上げた。
「そうそう。名前すら言ってなかったな。俺は遠藤 怜。お前は?」
嘘…。
珍しい苗字ではないけどまさかそんなことがあるなんて…。
それに同年代に名前を聞かれたのが久しかった僕は怖いの反面、喜びの気持ちを抑えながら自分の名前を言う。
「雅明。…遠藤 雅明」
それを聞いた遠藤くんは驚きながらも「なんだ同じ苗字か。どうりで後ろの席だと思ったよ」とはにかんだ。
その笑顔と窓の太陽光が反射して遠藤くんが輝いて見えた。
それが初めの出会い。
他愛のない話をしながら彼は一緒に帰ろうと言ってくれた。
「やっと終わったー」
遠藤くんは背伸びをしながらだるそうに歩いていた。
「そうだね。あはは」
久々に笑っている気がする。
でも…気は抜けない。
また変なことを言ったら…1人に逆戻りだ。
それだけは避けたい。
「なんか緊張してる?」
「へっ!?」
図星を突かれ思わず声が裏返る。
駄目だ。ボロが出ないようにしないと。
「そ、そう?そんなことないよ?」
「嘘つけ。声裏返ってるし、どもってんじゃん。…あー、もしかして俺怖い?視力下がってきてて見えづらいから目を細めるからさ。睨んでるように見える上に南西中だからよく言われるんだよな」
「そっそんなことないよ!でも僕はーー」
勢いで本当の事を言おうとした時だった。
「ーーあれ?お前遠藤?」
ビクッ
後ろから聞こえてきた声に思わず体硬直する。
震える体を無理に動かして後ろを振り返るとそこには中学校時代の同級生がいた。