隠れ鬼ごっこ
その後、お決まりの「覚えてろよ!」という言葉を残して齋藤くんは2人に抱えられながら立ち去っていった。


「………」


「………」



しばしの沈黙。


どっどうしよう…。


過去のことは知られてしまった上に、齋藤くんを追い返してくれた。


こういう時にどういった言葉をかけたらいいか分からない。


でも何か言わなきゃ……。


焦る僕をよそに遠藤くんは「…でさ。あそこのゲーセンにさ」と何事もなかったように話をし始めた。



「え!」



「何?」


思わず声を上げると遠藤くんは驚いたようにこちらを振り返った。


「き…気持ち悪くないの…?それに…分かるでしょ?いじめられてたんだよ?僕……」



悲しくはなったがそれ以上にそこははっきりとさせなければならないと思った。


隠してたとしたら…友達なんて絶対なれないから。


息を飲んで答えを待つ僕に彼は体をこちらに向けながら答えてくれた。



「何?気持ち悪がったり差別して欲しいの?」


「そうじゃないけど…でも……」



「別に良くね?多少違っても。俺は正直どうでもいいけど。俺が自分で見てダチになりたいって思ったんだから」


アニメのように風が吹き抜けていった。


その言葉を聞いて暫く唖然としたがその後僕の目からは涙が零れ落ちていった。


そんなことしたら引かれてしまうと思ったけど…我慢することなんて出来なかった。



そんな僕に「馬鹿。泣くほどのことかよ」と彼は優しく笑っていた。


それからだ。


元々友達同士だった文太達と一緒に過ごすことが出来たのは。


きっと怜会えなければ僕は引きこもりになって一生このキラキラしたところへは行けなかっただろう。


この日のことは昨日のことのように僕の心を温めてくれた。


毎日が光り輝いて楽しかった。
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