隠れ鬼ごっこ
「本当に…毎日楽しかった。初めて悪さもしたし、ゲーセンにも行った。誰かの家に泊まった。でも…同時に不安もあった。楽しい日々が過ぎるとともに……君たちと釣り合うのかわからなくなってきて。だから…さっきあの子が……言ったことは…ちょっとドキッとした」


「………」


「だけどそれもいらない心配だった。本当に嬉しかったよ」


「そんなこと…これからだって沢山やろう。いくらでも…やろうぜ。だから…!早くここを開けてくれ……!鬼はすぐそこにきてるだろうけど!そんなのどうにかすればいい!だから!」


悲願するように叫ぶ俺に対し…雅明は優しく笑った。


見えてないがなんとなくそう感じた。


そして……絶望した。


だってそれは…ここは開けないという雅明の意思が込められていたから。





「そんな怜に…本当に救われたんだ。だから……分かるんだ。きっと…あの鬼も僕と同じだって」


「え?」


だんだんと涙で滲んできた視界に震える声で聞き返す。


情けないが涙は止めることはできなかった。


「さっき触れられた時……なんとなく寂しさを感じた。それが、当たってれば……ここで僕が止められればこちらの勝ちだ。だから……ごめんね」


雅明の声も震えている。


雅明は雅明で思うところがあって泣いているのだろう。



「今まで本当にありがとう。もし……生まれ変わってまた出会ったのなら……その時は友達になってね」


そして俺が言葉を発するよりも早く雅明は大声で怒鳴りつけるように声を張り上げた。


「行って!!!早く!!!!」


その言葉が聞こえたのと同時に俺の目の前の壁から何かが叩きつけられる音がした。


何がぶつかっただなんて考えなくとも…いや、考えたくなくても分かってしまった。


ーードサリ


そしてその何かは…床に倒れた音が耳に届いた。
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