隠れ鬼ごっこ
…それからどれくらい経ったのだろうか。
時間にしてそんなに長い時間ではないと思うが体感時間は一晩くらいであった。
俺は体育座りをして俯いていた。
何もない廊下でこんなことをしている場合ではないと頭では分かってる…が。最早動く気にもなれなかった。
「……怜」
「……」
文太が声を掛けてきたが返事すら億劫だった。拓海が死んで…その後に雅明まで……。
その2人だけではない。嫌な女だったがそれでも……死に際を見るのはごめんだった。一度に多くの…死に触れすぎたんだ。それこそ時間にしたら30分以内位で…それはおこなわれた。
誰だって参るだろ?情けないと笑うならかってに笑えばいい。
本当にどうでも良くなってしまった。
「…怜」
再び文太は俺を呼んだがもちろん返事はしなかった。
「……」
おもむろに文太は俺に近づいてきた。…いや、正確には見ていないからそう感じただけだったが。
「……これ。雅明から」
「…?」
雅明の名前を聞いて反射的にゆっくり顔を上げた。目の前に居た文太は相変わらず悲しそうな表情を浮かべながら自分の携帯を差し出した。
黙って受け取ると雅明からのメッセージが受信フォルダに入っていた。
機械的に受け取ってそのメッセージに目を通す。
ーー文太へ。
このメッセージを見たら今すぐにきて欲しい。僕は今鬼に捕まる。怜に逃げてほしくて僕はシャッターを閉めたんだ
きっと怜は動かないで居るからお願いだから見たら西校舎の二階に来て欲しい
昇降口側から登ってきて道なりに進めば怜いるはずだから連れ出して欲しい
君にしかもうたのめない
そして無事にここをでて欲しい
いままでありがとうさようならーー
急いで打った為か改行が多く誤字があった。きっと防火壁を閉めた後に会話しながら打ったんだ。
「……なんだよ…。だったら…わかってたんだろ…なぁ…なんで…」
「…勝手な行動した上にこんな形で会うことになって申し訳ないと本当に思ってる。そしてお前にだけあいつらの死に際に立ち会わせて…本当に悪かった。でも俺はまだ勝手だから…今度はお前と逃げ切ろうと思う。お前は死にたくなってるだろうけど。雅明に頼まれちまったからな。泣こうが喚こうが…絶対に」
静かにカッコつけたような事を言う文太にムカついた。罵倒してやろうと思うが視界が歪んで勝手に喉が嗚咽して……
「…ッ…本当だよ…!勝手なことばっかしやがって…!ふざけるな…バカ…」
出てくる言葉の幼稚さに我ながら笑えてくるような…そんな小学生みたいな悪口しか出てこなかった。
「…ごめん。でも殴られたからチャラな」
その言葉を聞いて少しだけ我に帰ることが出来た。
「さっきのはノーカンだバーカ」
そう言って文太の頬を思い切り殴ってやった。
「ッて!!おい!さっき散々殴られただろうが!」
「うるせぇ!3人分まとめてだこの大馬鹿野郎!」
静かな廊下に響き渡る声に女の子2人は慌てていたが止めようとはしなかった。
…悪かったな、雅明。
心配かけさせて。でも……少しだけ前を向く。
そしてありがとう。こんな情けない俺を友達だと言ってくれて…守ってくれて。
気持ち的にはまだまだ整理できていないが、少しだけ元の自分に戻れた気がした。
時間にしてそんなに長い時間ではないと思うが体感時間は一晩くらいであった。
俺は体育座りをして俯いていた。
何もない廊下でこんなことをしている場合ではないと頭では分かってる…が。最早動く気にもなれなかった。
「……怜」
「……」
文太が声を掛けてきたが返事すら億劫だった。拓海が死んで…その後に雅明まで……。
その2人だけではない。嫌な女だったがそれでも……死に際を見るのはごめんだった。一度に多くの…死に触れすぎたんだ。それこそ時間にしたら30分以内位で…それはおこなわれた。
誰だって参るだろ?情けないと笑うならかってに笑えばいい。
本当にどうでも良くなってしまった。
「…怜」
再び文太は俺を呼んだがもちろん返事はしなかった。
「……」
おもむろに文太は俺に近づいてきた。…いや、正確には見ていないからそう感じただけだったが。
「……これ。雅明から」
「…?」
雅明の名前を聞いて反射的にゆっくり顔を上げた。目の前に居た文太は相変わらず悲しそうな表情を浮かべながら自分の携帯を差し出した。
黙って受け取ると雅明からのメッセージが受信フォルダに入っていた。
機械的に受け取ってそのメッセージに目を通す。
ーー文太へ。
このメッセージを見たら今すぐにきて欲しい。僕は今鬼に捕まる。怜に逃げてほしくて僕はシャッターを閉めたんだ
きっと怜は動かないで居るからお願いだから見たら西校舎の二階に来て欲しい
昇降口側から登ってきて道なりに進めば怜いるはずだから連れ出して欲しい
君にしかもうたのめない
そして無事にここをでて欲しい
いままでありがとうさようならーー
急いで打った為か改行が多く誤字があった。きっと防火壁を閉めた後に会話しながら打ったんだ。
「……なんだよ…。だったら…わかってたんだろ…なぁ…なんで…」
「…勝手な行動した上にこんな形で会うことになって申し訳ないと本当に思ってる。そしてお前にだけあいつらの死に際に立ち会わせて…本当に悪かった。でも俺はまだ勝手だから…今度はお前と逃げ切ろうと思う。お前は死にたくなってるだろうけど。雅明に頼まれちまったからな。泣こうが喚こうが…絶対に」
静かにカッコつけたような事を言う文太にムカついた。罵倒してやろうと思うが視界が歪んで勝手に喉が嗚咽して……
「…ッ…本当だよ…!勝手なことばっかしやがって…!ふざけるな…バカ…」
出てくる言葉の幼稚さに我ながら笑えてくるような…そんな小学生みたいな悪口しか出てこなかった。
「…ごめん。でも殴られたからチャラな」
その言葉を聞いて少しだけ我に帰ることが出来た。
「さっきのはノーカンだバーカ」
そう言って文太の頬を思い切り殴ってやった。
「ッて!!おい!さっき散々殴られただろうが!」
「うるせぇ!3人分まとめてだこの大馬鹿野郎!」
静かな廊下に響き渡る声に女の子2人は慌てていたが止めようとはしなかった。
…悪かったな、雅明。
心配かけさせて。でも……少しだけ前を向く。
そしてありがとう。こんな情けない俺を友達だと言ってくれて…守ってくれて。
気持ち的にはまだまだ整理できていないが、少しだけ元の自分に戻れた気がした。