隠れ鬼ごっこ
ーー雅明side
「うん……」
不意に頭の鈍い痛みと共に意識が戻った。
あれ…僕は一体……。
鈍痛が波打つ頭の中で記憶の跡を辿っていく。確か……僕はまた襲って来たあの子…鬼にお腹を蹴られて…頭を思い切り殴られて……。
その前の記憶では確かに捕まったはず。それなら今頃昴や拓海…あの子たちみたいに殺されるはずだ。…でも生きている。僕が死んだと思って見落とした…?いや…あの目に戻った鬼が…何よりあのピエロが僕を見逃すはずがない。
なのに何故…?
段々と意識が戻り頭の痛みが強くなるが視界はハッキリしてきた。
「…!」
そこで初めて自分が何かに拘束されているのに気付いた。まるで見せしめの為に殺された聖女のように。十字架に張り付けられ、両腕両足に金属の枷が付けられていた。
「な…何これ…?」
捕まってる…?なんで僕だけ…。
「やぁやぁやぁ!起きたー?」
「!!」
すぐ右から寒気のする声が聞こえてきて体が凍りついた。僅かに首を右に向けるとすぐ側にピエロが卑しい笑顔を向けていた。
「ひっ……!」
思わず小さな悲鳴が口から溢れた。
「ソンナに怖がらないでヨ」
スッと離れながら僕から離れる。
「な…なんで僕を…」
「んふふふふ〜♪不思議だよネ?なんで生きてるのカ!丁度"良いタイミング"だったからネ!キミには生きてて貰ったノ!」
楽しそうにくるくる回るピエロを見て僕は困惑した。良いタイミング…?なんのだ?困惑する僕を見てピエロはニヤニヤと嫌な笑い方をしながら説明を続ける。
「キミも薄々気付いてると思うケド…あの子はそろそろダメになるからサ!替えが欲しいと思っていたんダ★」
「替え…?」
「ソ!鬼には条件があるんダ。まずはよく言えば優しい子だネ。もう一つは……色々感じられる子…♪」
ニタァと笑ったピエロを見て僕の頭の中に恐ろしい考えが浮かんできた。
「ま…まさか…!」
「ソ!…折角いい人材がいるんだからストック作っておかないと勿体ないよネ♪あの子が壊れたら…次の鬼はキミだヨ!ま〜さあきく〜ん♪」
「…!!」
僕が次の鬼…?あんなことを…あんな操り人形みたいな風にならないといけないの?なにより…あんな孤独な目に……。いやだ…!怖いよ…!
恐怖で思わず体が動く。逃れようと踠いてみるものの、カチャカチャという金属音が無情に鳴るだけであった。
「ムダムダ〜♪絶対に逃げられないヨ★」
「ッ…!ハァ…ハアッ…!」
そう言われても抵抗し続ける。呼吸は乱れ、恐怖で歯が音を立てて鳴り意思とは関係なく涙が流れていく程…体だけでも拒絶反応が大きく現れていた。
「アレレ〜?どうしたの〜?震えてるネェ?」
そんな僕を裏腹にピエロは楽しそうに笑っていた。
「……だ……!」
「ン〜?」
震える体を…口を無理やり動かして必死に言葉にしようとする僕に耳を近づけてピエロは聞き返す。
「い…やだ…!お願い…します…!や…やめて…ください…!」
途切れ途切れになりながらもなんとか言葉にすることができた。
「何言ってんノ〜?キミは捕まったノ。どーしようが僕の勝手デショー?それに死ぬより全然マシだと思うケド〜?」
「あ…あんな…風になるく…くらいなら…死んだ…方が…マシ………!い…今すぐ…殺して…ください…!」
歯が勝手に鳴ってしまうので舌を噛んでしまった。口の中に血の味が広がるがそんな痛みなんて感じなかった。それよりもこの恐怖の方が遥かに上であった。
「…ふふふ〜♪そんなに…死にたいノ〜?死はキミが思ってるよりも遥かに怖いゾ〜?無だヨ〜?」
「そっそれでも…!ほか…他の人とお、同じの方が……!」
首を左右に激しく振って拒絶を示す。情けないがそれしか出来なかった。暫しの沈黙が流れる。情けない歯が合わさる音、乱れた呼吸音、金属音だけが辺りに鳴り響いていた。
「……そっか。そんなにイヤなんだネ」
体感で長い沈黙を破ってピエロはそう呟いた。僕は必死に首を縦に振る。
「仕方ない…それジャ……」
そう言いながら僕の方に長い爪が生えた手を向けてきた。命が消えいくというのに安堵する。良かった…これで僕は……。
安心して下を向いた瞬間であった。ガシッと両頬を掴まれて上を向かせられる。
「ーーなーんてネ!ダーメ♪キミは簡単に死なせナイ…♪ボロボロになるまで…ボクの大切な玩具ダ…♪」
狂気に満ちた目で笑うピエロと対照に僕は絶望で目の前が暗くなっていくのが分かった。
絶望のあまり喉元まで出かけた絶叫を抑えるように口を押さえられてもう片方の手で黒く光るジャグリングで使うような星が描かれたボールを出す。
そこから出ているオーラは想像するだけで吐き気がしてくるのような禍々しいものだった。…それを間髪入れずに僕の胸元に押し付けた。
「ッ………!!!!」
一瞬で体を駆け巡る悪意や悲しみ…憎しみ。負の感情を凶悪にしたような波が体を巡っていく。自分がもう駄目なのは分かっていた。
怜………!
僕…………!
最後に友人の顔が浮かんできて「おやすみ〜まーさあきクン…♪」というピエロの声と共に僕の意識は負の嵐の中に投げ出された。
「うん……」
不意に頭の鈍い痛みと共に意識が戻った。
あれ…僕は一体……。
鈍痛が波打つ頭の中で記憶の跡を辿っていく。確か……僕はまた襲って来たあの子…鬼にお腹を蹴られて…頭を思い切り殴られて……。
その前の記憶では確かに捕まったはず。それなら今頃昴や拓海…あの子たちみたいに殺されるはずだ。…でも生きている。僕が死んだと思って見落とした…?いや…あの目に戻った鬼が…何よりあのピエロが僕を見逃すはずがない。
なのに何故…?
段々と意識が戻り頭の痛みが強くなるが視界はハッキリしてきた。
「…!」
そこで初めて自分が何かに拘束されているのに気付いた。まるで見せしめの為に殺された聖女のように。十字架に張り付けられ、両腕両足に金属の枷が付けられていた。
「な…何これ…?」
捕まってる…?なんで僕だけ…。
「やぁやぁやぁ!起きたー?」
「!!」
すぐ右から寒気のする声が聞こえてきて体が凍りついた。僅かに首を右に向けるとすぐ側にピエロが卑しい笑顔を向けていた。
「ひっ……!」
思わず小さな悲鳴が口から溢れた。
「ソンナに怖がらないでヨ」
スッと離れながら僕から離れる。
「な…なんで僕を…」
「んふふふふ〜♪不思議だよネ?なんで生きてるのカ!丁度"良いタイミング"だったからネ!キミには生きてて貰ったノ!」
楽しそうにくるくる回るピエロを見て僕は困惑した。良いタイミング…?なんのだ?困惑する僕を見てピエロはニヤニヤと嫌な笑い方をしながら説明を続ける。
「キミも薄々気付いてると思うケド…あの子はそろそろダメになるからサ!替えが欲しいと思っていたんダ★」
「替え…?」
「ソ!鬼には条件があるんダ。まずはよく言えば優しい子だネ。もう一つは……色々感じられる子…♪」
ニタァと笑ったピエロを見て僕の頭の中に恐ろしい考えが浮かんできた。
「ま…まさか…!」
「ソ!…折角いい人材がいるんだからストック作っておかないと勿体ないよネ♪あの子が壊れたら…次の鬼はキミだヨ!ま〜さあきく〜ん♪」
「…!!」
僕が次の鬼…?あんなことを…あんな操り人形みたいな風にならないといけないの?なにより…あんな孤独な目に……。いやだ…!怖いよ…!
恐怖で思わず体が動く。逃れようと踠いてみるものの、カチャカチャという金属音が無情に鳴るだけであった。
「ムダムダ〜♪絶対に逃げられないヨ★」
「ッ…!ハァ…ハアッ…!」
そう言われても抵抗し続ける。呼吸は乱れ、恐怖で歯が音を立てて鳴り意思とは関係なく涙が流れていく程…体だけでも拒絶反応が大きく現れていた。
「アレレ〜?どうしたの〜?震えてるネェ?」
そんな僕を裏腹にピエロは楽しそうに笑っていた。
「……だ……!」
「ン〜?」
震える体を…口を無理やり動かして必死に言葉にしようとする僕に耳を近づけてピエロは聞き返す。
「い…やだ…!お願い…します…!や…やめて…ください…!」
途切れ途切れになりながらもなんとか言葉にすることができた。
「何言ってんノ〜?キミは捕まったノ。どーしようが僕の勝手デショー?それに死ぬより全然マシだと思うケド〜?」
「あ…あんな…風になるく…くらいなら…死んだ…方が…マシ………!い…今すぐ…殺して…ください…!」
歯が勝手に鳴ってしまうので舌を噛んでしまった。口の中に血の味が広がるがそんな痛みなんて感じなかった。それよりもこの恐怖の方が遥かに上であった。
「…ふふふ〜♪そんなに…死にたいノ〜?死はキミが思ってるよりも遥かに怖いゾ〜?無だヨ〜?」
「そっそれでも…!ほか…他の人とお、同じの方が……!」
首を左右に激しく振って拒絶を示す。情けないがそれしか出来なかった。暫しの沈黙が流れる。情けない歯が合わさる音、乱れた呼吸音、金属音だけが辺りに鳴り響いていた。
「……そっか。そんなにイヤなんだネ」
体感で長い沈黙を破ってピエロはそう呟いた。僕は必死に首を縦に振る。
「仕方ない…それジャ……」
そう言いながら僕の方に長い爪が生えた手を向けてきた。命が消えいくというのに安堵する。良かった…これで僕は……。
安心して下を向いた瞬間であった。ガシッと両頬を掴まれて上を向かせられる。
「ーーなーんてネ!ダーメ♪キミは簡単に死なせナイ…♪ボロボロになるまで…ボクの大切な玩具ダ…♪」
狂気に満ちた目で笑うピエロと対照に僕は絶望で目の前が暗くなっていくのが分かった。
絶望のあまり喉元まで出かけた絶叫を抑えるように口を押さえられてもう片方の手で黒く光るジャグリングで使うような星が描かれたボールを出す。
そこから出ているオーラは想像するだけで吐き気がしてくるのような禍々しいものだった。…それを間髪入れずに僕の胸元に押し付けた。
「ッ………!!!!」
一瞬で体を駆け巡る悪意や悲しみ…憎しみ。負の感情を凶悪にしたような波が体を巡っていく。自分がもう駄目なのは分かっていた。
怜………!
僕…………!
最後に友人の顔が浮かんできて「おやすみ〜まーさあきクン…♪」というピエロの声と共に僕の意識は負の嵐の中に投げ出された。