隠れ鬼ごっこ
「雅明は…扉を閉めた後にこう言った。"分かるんだ。あの鬼も僕と同じだって"と」
「同じ?」
「その後追いついてきた鬼と会話してたんだ。俺は雅明の問いに答えてる鬼の言葉を聞いてアイツはただの鬼じゃないと感じたんだ。その時に雅明はこんなことやめようと言っていたんだが…その言葉に一度傾きかけたんだ」
「え…あのバケモンが?」
「あぁ。ピエロが出てきてダメになったが…。その時ピエロは僕を裏切るの?と鬼に言ってた。そこからまた鬼が戻ったんだ。今だから思うが…あの鬼は元々俺たちと同じ人間だったんじゃないか?」
「…は?あんなに平気で殺してくる奴が?」
雅明の言葉から文太が信じられないといった顔でこちらを見ていた。信じられないのも無理はないだろう。あの鬼と優しい雅明が同じな訳がないのだから。
「信じられない気持ちは分かる。俺もそこをよく考えた。雅明が言った同じ部分は…多分俺らと会う前の雅明を示しているんじゃないのかと」
「出会う前ってことは…いじめられた時か」
「あぁ。もしあの鬼を人間と仮定したらだ。奴も同じようにいじめられてたんじゃないのか?」
「なるほど。そうすると舞台が学校なのもこんなに暗い雰囲気なのも説明はつくよね」
辺りを見ながら奈緒は答える。学校でいじめられていたのなら好きな場所では決してない。ましてや好きな場所はこんなことをする場所には使えない。だからこその学校なのだろう。
「雅明の言葉にも耳を貸す素振りもあった。何も効かない本物の化け物とは違う。それなら…あいつがいじめられてた当時の様子が分かれば無力化することは可能かもしれない」
「…俺らであいつを同じ様にやるってことか?」
「あぁ。だが出来れば脅しだけに使いたいところだな。…相手が誰であろうといじめの様なクソみたいなことはしたくない」
「それは同感です。私もそういうの嫌いです」
俺と真里の言葉に2人は何か言いたげではあったが黙って言葉を飲み込んでくれていた。2人が言いたいことは大体予想つく。そんな半端なことをしてあの鬼が止められるのか。危険なのではないか?と言いたいのだろう。だが…雅明を見てきたからこそ俺はその行為に嫌悪感を感じる。腐ってもそんなことはしたくなかった。きっと奈緒も真里をずっと守ってきたのだろう。真里の言葉には言い返す気にはなれないようだ。
「分かった!…と快諾は出来ないがお前の考えは分かったよ」
文太に至っては腐れ縁。俺の考えてることはお見通しのようで半ば呆れながらもそう言ってくれた。
「悪いな」
「何を今更。で?どうやって当時の状況を知るんだ?」
「恐らく…この学校内に何か手がかりがあるはずだ」
「でももしかしたら弱点になりつつあるそんなもの…置いてたりするもの?」
「多分あると思うぞ。…いじめられてた奴はいじめられている事実を隠したい一方で実は助けて欲しいという気持ちがある。だからあるはずだ。…まぁ仮説が合ってればの話だ。それでもやってみるか?」
校舎の中を何かを探しながら…別のものに気を取られながら動き回れば鬼に遭遇してまた誰かが犠牲になる可能性もある。完全な賭けだ。もしここで誰か1人でも出来ないと判断すれば俺は巻き込むつもりはない。その時は1人でやってやるさ。
暫くの沈黙が辺りを包んだ。辺りに音は一つもない。ある意味鬼が来てるかわかりやすい状況であった。
「……探してみましょう」
「「!」」
その沈黙を最初に破ったのは意外な事に真里だった。
「少しでも…この状況を打開できるのならそれだけでもやる意味はあるはずです」
力強くそう言う真里に何か強い意志を感じた。真里は俺よりも友達やその他の死を見てきた。思うところがあるのだろう。
「…アタシもするよ。正直これ以上危険に突っ込む必要ある?って思うところもあるけど。それでも…その方が気も紛れるし」
「真里がなんとかしたいって思ってるのにほっとけないし」とニカッと笑った。真里も「ありがとう」と微笑んでいた。
そこで自然と一斉に文太に目が向く。文太はなんとも言えない表情で考え込んでいる。なんだかんだ文太は普段こそおちゃらけているが慎重深いところがある。きっと色々考えているのだろう。
再び暫しの沈黙が戻った。やがて文太は目を瞑り少し下を向いた後、ゆっくり顔を上げてこちらを向いた。
「やろうぜ。例え違っていたとしても俺はなんとかしたい。お前を信じるぜ怜」
決意を固めた目で真っ直ぐ俺を見て文太はそう答えた。きっとこれ以上危険な目に遭うのは…とかわざわざ足を突っ込まなくてもいいんじゃないか?とも思っていただろう。それでも信じてくれると言ってくれた。
「…ありがとな」
「おう」
ニッと笑った文太を見て俺は少しだけ口角を上げた。
こうして俺たちは鬼の手がかりを探すこととなった。
「同じ?」
「その後追いついてきた鬼と会話してたんだ。俺は雅明の問いに答えてる鬼の言葉を聞いてアイツはただの鬼じゃないと感じたんだ。その時に雅明はこんなことやめようと言っていたんだが…その言葉に一度傾きかけたんだ」
「え…あのバケモンが?」
「あぁ。ピエロが出てきてダメになったが…。その時ピエロは僕を裏切るの?と鬼に言ってた。そこからまた鬼が戻ったんだ。今だから思うが…あの鬼は元々俺たちと同じ人間だったんじゃないか?」
「…は?あんなに平気で殺してくる奴が?」
雅明の言葉から文太が信じられないといった顔でこちらを見ていた。信じられないのも無理はないだろう。あの鬼と優しい雅明が同じな訳がないのだから。
「信じられない気持ちは分かる。俺もそこをよく考えた。雅明が言った同じ部分は…多分俺らと会う前の雅明を示しているんじゃないのかと」
「出会う前ってことは…いじめられた時か」
「あぁ。もしあの鬼を人間と仮定したらだ。奴も同じようにいじめられてたんじゃないのか?」
「なるほど。そうすると舞台が学校なのもこんなに暗い雰囲気なのも説明はつくよね」
辺りを見ながら奈緒は答える。学校でいじめられていたのなら好きな場所では決してない。ましてや好きな場所はこんなことをする場所には使えない。だからこその学校なのだろう。
「雅明の言葉にも耳を貸す素振りもあった。何も効かない本物の化け物とは違う。それなら…あいつがいじめられてた当時の様子が分かれば無力化することは可能かもしれない」
「…俺らであいつを同じ様にやるってことか?」
「あぁ。だが出来れば脅しだけに使いたいところだな。…相手が誰であろうといじめの様なクソみたいなことはしたくない」
「それは同感です。私もそういうの嫌いです」
俺と真里の言葉に2人は何か言いたげではあったが黙って言葉を飲み込んでくれていた。2人が言いたいことは大体予想つく。そんな半端なことをしてあの鬼が止められるのか。危険なのではないか?と言いたいのだろう。だが…雅明を見てきたからこそ俺はその行為に嫌悪感を感じる。腐ってもそんなことはしたくなかった。きっと奈緒も真里をずっと守ってきたのだろう。真里の言葉には言い返す気にはなれないようだ。
「分かった!…と快諾は出来ないがお前の考えは分かったよ」
文太に至っては腐れ縁。俺の考えてることはお見通しのようで半ば呆れながらもそう言ってくれた。
「悪いな」
「何を今更。で?どうやって当時の状況を知るんだ?」
「恐らく…この学校内に何か手がかりがあるはずだ」
「でももしかしたら弱点になりつつあるそんなもの…置いてたりするもの?」
「多分あると思うぞ。…いじめられてた奴はいじめられている事実を隠したい一方で実は助けて欲しいという気持ちがある。だからあるはずだ。…まぁ仮説が合ってればの話だ。それでもやってみるか?」
校舎の中を何かを探しながら…別のものに気を取られながら動き回れば鬼に遭遇してまた誰かが犠牲になる可能性もある。完全な賭けだ。もしここで誰か1人でも出来ないと判断すれば俺は巻き込むつもりはない。その時は1人でやってやるさ。
暫くの沈黙が辺りを包んだ。辺りに音は一つもない。ある意味鬼が来てるかわかりやすい状況であった。
「……探してみましょう」
「「!」」
その沈黙を最初に破ったのは意外な事に真里だった。
「少しでも…この状況を打開できるのならそれだけでもやる意味はあるはずです」
力強くそう言う真里に何か強い意志を感じた。真里は俺よりも友達やその他の死を見てきた。思うところがあるのだろう。
「…アタシもするよ。正直これ以上危険に突っ込む必要ある?って思うところもあるけど。それでも…その方が気も紛れるし」
「真里がなんとかしたいって思ってるのにほっとけないし」とニカッと笑った。真里も「ありがとう」と微笑んでいた。
そこで自然と一斉に文太に目が向く。文太はなんとも言えない表情で考え込んでいる。なんだかんだ文太は普段こそおちゃらけているが慎重深いところがある。きっと色々考えているのだろう。
再び暫しの沈黙が戻った。やがて文太は目を瞑り少し下を向いた後、ゆっくり顔を上げてこちらを向いた。
「やろうぜ。例え違っていたとしても俺はなんとかしたい。お前を信じるぜ怜」
決意を固めた目で真っ直ぐ俺を見て文太はそう答えた。きっとこれ以上危険な目に遭うのは…とかわざわざ足を突っ込まなくてもいいんじゃないか?とも思っていただろう。それでも信じてくれると言ってくれた。
「…ありがとな」
「おう」
ニッと笑った文太を見て俺は少しだけ口角を上げた。
こうして俺たちは鬼の手がかりを探すこととなった。