幼馴染みの初恋
白夜はユイの家の近くまで来ると走るのを辞める。

ドクンっ…ドクンッ…

自分の身体から心臓の音がする、走って疲れたなのかユイへの気持ちなのかはわからないが心臓は大きくなる、周りに聞こえてしまうような、そんな心臓の音がしている。
ユイの家に目をやるとボロボロのハヤテとユイが立っていた。
「おーい!」
白夜は二人に声をかけながら小走りする、二人も白夜に気付いて手を振る。
でも、二人は気持ちをどう伝えるか迷っている、二人に近付きハヤテに何があったか聞く。
「喧嘩にゃん♪」
ハヤテはハクに抱き着きついて頬擦りしている、白夜はハヤテをどかせてユイに近寄る、
「大丈夫か?」
白夜はユイを好きになってから初めて素直に話しをする、ユイは下を向いたまま首を縦に振るだけ、それを見たハヤテは気をきかせて二人から消えていく
「おれ、帰るにゃ〜♪」
ハヤテは白夜のユイに後ろ向きで手を振る。
「猫のDVDでも借りて帰ろうにゃん〜♪」
二人はハヤテが立ち去った後も無言。
「あの…歩こうか…」
白夜はユイの先を歩き始める辺りは薄暗い、でも夕日は綺麗で、二人の幸せを願っているようだった。
二人は街を見渡せる丘まで歩く。
「綺麗だな…」
街からは屋台ラーメンの放送が流れて、それを聞いて家から出てくる子供とその親。
空には鳥達が母親の後について巣に帰っていく。
「ここにくるのも久し振りだね」
ここに来てやっとユイが話し出す。
「だな…」
ユイは白夜の隣にいって白夜の手をにぎる、二人以外には誰もいない、二人を邪魔するものはない。
「覚えてるか?あの杉の木の噂」
白夜は丘から見えている杉の木に指を指す。
「うん、前にも話してたからね…」
二人は見つめて笑い合う
「あの時は俺も死んだと思ったよ」
白夜は丘を背にしてそこから落ちないようにしてある鉄格子にもたれかかる。
「あの後病院で意識取り戻したら、ユイ俺の手つかんで寝てたんだよな」
ユイは鉄格子に腕組しながら杉の木を涼しげな顔をしてみつめる。
「私のせいだって思ったから…離れる訳にはいかないかなって…」
白夜はユイを流し目で見ると一瞬目が合う…
「いや…ほら…連れて行ったのは俺だし…」
二人は少し笑顔になっていた
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