紅龍 ―3―




そうよ。




“完璧”な人間なんていない。




惇だって、私だって完璧なんかじゃない。




でも。




でも、そんな事言ったらあの子はどうなる。





『…―意識、飛ばしてしまったようですね。蘭は。』




「き、恭平君。」





…―恭平君。





あの子は完璧に近い気がする。





『楓さん、久しぶりですね。』




いつの間にそこに居たのか。




私たちの後ろには恭平君がいた。






「えぇ。久しぶりね。」




その恭平君の顔を振り向いて見たとき、私は息を飲んだ。




『どうしたんですか?』




恭平君は“顔しか”笑っていなかった。




目は光を通していない。





< 13 / 79 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop