紅龍 ―3―
『楓さん。こいつは今、いっぱいいっぱいなんです。』
『もし蘭が堪えられなくなった時は相談にのってやって下さいね?』
その心のない言葉に何を隠している?
『では─…。』
背中を向けて帰って行く恭平君の姿を見つめながら私はスッキリしなかった。
こんな事だったらおもいっきり殴られたほうがましだと思った。
意味もなく変な話を聞かされて─…。
私は近くにあった石ころをおもいっきり蹴った。
コロコロと転がる石。
「二ノ宮─…恭平。」
そう呟きながら私は今にも雨の降りそうな空を見上げた。