Tear
あたしは歩く速度を弱め遠くからあの男を見る
ベンチに座って何かを考えているようだった
あたしも覚えてるよ
だってあたしの初恋だから…
今でも忘れはしない
天気は曇り。空が泣き出しそうな中
あたしは一人公園にいた
お父さんもお母さんも仕事で
忙しくてまだ幼かったあたしは
いつも一人ぼっち
友達なんているはずもない
でもね
そこであなたと出会ったの…
「ねぇねぇ地面に何描いてるの?」
知らない男の子が喋りかけてきた
「パパとママとあたしの絵を描いてるの」
「なんで今一人なの?」
男の子はきょとんっとした顔をして
あたしに聞く
「パパもママもお仕事で忙しいから
いつも一人ぼっちなの…」
あたしはそう言いながら涙を流した
「じゃあ僕が幸せにしてあげる!
もう一人ぼっちになんかさせないよ!」
っと言いあたしの涙をそっと拭う
「お名前は?」
「桜井奈々…」
「可愛い名前だね」
そう言ってあたしに素敵な笑顔を
見せてくれた
これが幼き頃のあたしの初恋