秋桜が散る前に
私はそれから必死に目立たないようにした。
歌ってと言われても断った。
別に、キリスト教に理解を求めている訳じゃない。
私だって理解していない。
―信じる者は救われる。―
そんなの嘘だ。
「あ、藤子お手洗い〜」
「あ、ハルも〜」
「ユズも〜」
「じゃ、あたしも。咲夢、行こう。」
「えっ?あ、うん…」
私は優香に連れられてトイレに向かって、5人の女子がひしめくトイレはちょっと暑苦しい。
なんで女子全員…?
「ね、誰にする?」
そう口火を切ったのは藤子だ。
「あたしはユウヤくんかな〜」
「あたしはジュンヤくん!優香は?」
「あたしは…うーん、今回はパスかな。」
「そんなこと言って、毎回じゃん。」
「あたしは仕掛人がいちばん性に合ってるんだよ。そう言う藤子はどうなの?」
「ん〜藤子はぁ…秋くんかなぁ〜…ねー、咲夢は?」
私を見る藤子はちょっと凄みをおびている。
「私は、数合わせだし、パス…かな。」
本心ではあった。
でも、
何かから逃げた気がした。