秋桜が散る前に
第1章 ミカエル
学校の大天使
聖書で、大天使ミカエルのことを読んだ事がある。
神の軍隊を率いる、神に選ばれた天使。
「咲夢ぁー、昨日はどういうことか説明しなよ。」
きっと、人間界ならちょうど今の藤子みたいなもんだろう。
「どういうこともこういうこともないよ。家、門限厳しいから。」
「なんでそれを秋くんが知ってんのよ?」
「それは…」
なんて言えばいいんだろう。
孤児院の話なんてしたくない。したって信じてくれないだろうし。
昨日の事で、藤子はひどく腹を立てているらしい。
朝、私が学校に来るなり私を取り巻きと共に責めたて始めた。
「なに?言えない理由でもあるの?」
藤子はちょっと低い声色で私を威嚇する。
私はたまらずに答えた。
「お、お兄ちゃんの、友達なのっ。でも、お兄ちゃん、去年死んだ…から、お、お葬式で、会っただけ…」
お兄ちゃん。
外では奏太くんを『お兄ちゃん』と呼んだ。
私は、それが嫌だった。
お兄ちゃんじゃない。
違うよ。
私、奏太くんの妹はいや。
「咲夢…!?藤子何してるの!やめて!」
遠くで、優香の声がした。