秋桜が散る前に
………あれ、視界が眩しい。
「咲夢!」
「優香…?」
「良かった…藤子に何言われたの?」
心配顔の優香の顔。
優香は奏太くんが死んでからよくこんな顔をする。
えーと、私、何してたんだっけ…?
そうだ、昨日の合コンで大天使ミカエル(藤子)の不興をかって、神の大軍(藤子の取り巻き)をけしかけられたんだっけ。
「咲夢?大丈夫?ここ保健室だよ。」
「あー…藤子、は?」
「あんたが急に倒れるから、逃げてったよ。」
「そう…」
だめだ。私、成長してないや。
奏太君の事、まったく吹っ切れてない。
後悔と涙が重なっただけ。
みんなが奏太くんを忘れて行くだけ。
私の中の奏太くんが思い出になるだけ。
「やっぱり、まだ、ダメなんだね。」
「ごめん。優香…心配ばかりかけて、ごめん。でも、消えないの…どうすればいい?奏太くんはっ、奏太くんはもういないのにっ………」
消えない。
どうしたら消える?
言えなかった言葉。
気持ち。
どうしたら消える?
―神は乗り越えられる試練しか、我々にお与えにならないのだ。―
牧師さん。
私は、どうしたら、
奏太くんの死を乗り越えられますか…?