秋桜が散る前に




………あれ、視界が眩しい。




「咲夢!」


「優香…?」


「良かった…藤子に何言われたの?」




心配顔の優香の顔。


優香は奏太くんが死んでからよくこんな顔をする。



えーと、私、何してたんだっけ…?


そうだ、昨日の合コンで大天使ミカエル(藤子)の不興をかって、神の大軍(藤子の取り巻き)をけしかけられたんだっけ。




「咲夢?大丈夫?ここ保健室だよ。」


「あー…藤子、は?」


「あんたが急に倒れるから、逃げてったよ。」


「そう…」




だめだ。私、成長してないや。


奏太君の事、まったく吹っ切れてない。


後悔と涙が重なっただけ。


みんなが奏太くんを忘れて行くだけ。


私の中の奏太くんが思い出になるだけ。




「やっぱり、まだ、ダメなんだね。」


「ごめん。優香…心配ばかりかけて、ごめん。でも、消えないの…どうすればいい?奏太くんはっ、奏太くんはもういないのにっ………」




消えない。



どうしたら消える?


言えなかった言葉。


気持ち。


どうしたら消える?


―神は乗り越えられる試練しか、我々にお与えにならないのだ。―



牧師さん。


私は、どうしたら、


奏太くんの死を乗り越えられますか…?





< 23 / 65 >

この作品をシェア

pagetop