秋桜が散る前に



「あれ?サクねえもうガッコーおわったの?そのおねえちゃんだあれ?」

「しー!一馬、お母さんは?」


「ガッコーにいった。いまね、しゅーくんがきてるの。」


「“しゅーくん”…?」



そんなボランティアさんいたっけな…?



私は優香と2人で学校をサボって教会に来ている。


お母さんも仕事があるから、0〜6歳までの子供は教会で牧師さんに文字を教わったり、ボランティアさんと遊んだりして過ごす。


牧師さんに見つかっても何も言われないけど、お母さんに見つかる訳にはいかない。




「しゅーくんもね、ガッコーおやすみしたんだって。」




…おいおいおいおい…



ひょっとして、と思った私は、優香に一馬の預けて、礼拝堂の奥にある、いつも子供達がいる部屋のドアを開けた。




「あっ!サク姉!どうしたの〜?」




そう言って来て私にまとわりついたのは今年5歳になる早和(サワ)っていう女の子。




この部屋には赤ん坊も1人いて、つい最近妹になった七瀬(ナナセ)推定0歳はすやすや眠っていた。


だけど、そんな七瀬の横で、今し方まで早和に読み聞かせていたらしい『かぐや姫』の絵本を持って呆然としている人が約1名。




「しゅ、秋くん!?」




私がそう言うと、秋くんはバツの悪そうな顔をして、




「昨日ぶり…?」




そんな間抜けな事を言って、頭をポリポリ掻いた。






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