秋桜が散る前に
「早和、お庭いきたいー。」
そんな早和の一言で、私達は一馬と早和と七瀬を連れて、庭に出た。
成り行きで秋くんもついて来ている。
お昼まであと何時間だろう。もうすぐ七瀬のミルクも作らなきゃ…
そんな用事で頭をいっぱいにして秋くんを意識にいれないようにする。
「「サク姉お歌うたってー。」」
「いいよ。何がいい?」
「『きけや』がいい。」
「やだよ。『母の日』がいい。」
「このまえ早和ちゃんだったから、こんどはぼくー!」
「やだ!カズは年下なんだから、だめ!」
「ケンカしちゃダメ!両方とも歌ってあげるから。」
七瀬が起きない程度に声を抑えて、私は歌い出した。
小さい頃から、賛美歌は好きだった。
英語じゃ歌えないし、たいして上手い訳でもないけれど、両親のいない、名前さえつけてもらえなかった私への最高の慰めだった。
心が沈んだとき、悲しいとき、嬉しいとき、歌は必ず私の隣りにいたから。