秋桜が散る前に



「んー…」




まったく、本当に人の気も知らないで…無防備なのもいい加減にしねぇと、マジでだれかに襲われそうだ。


人を暖かく包み込む、傷だらけの聖母さま。




「奏太…くん…」


「っ!!」




傷だらけ。傷の癒し方を知らない、聖母さま。



けど、俺は、そんな彼女に惹かれてる。


始めて見た時から、奏太の好きな奴だと知ってからも、奏太が死んでからは、もっと。



奏太は親友だった。


あんまり他の奴とつるまない。


自分の事は話さないし、どこか大人びていた。


無愛想で鈍感だった。


確かに、俺と奏太は似ていた。



だけど、思い知らされる。


どれだけ奏太と似ていても、咲夢さんにとって奏太は1人だ。



今、俺の手を握って、涙ぐんでいるのは、俺じゃなく、奏太を思って泣いている咲夢さん。




「残酷だな…聖母さま。」




本当に。


残酷だよ。



奏太。






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