秋桜が散る前に
それでも、咲夢さんを諦められない俺がいる。
どんなに無茶で、不可能だとしても、
諦めきれないんだ。
俺は握られた手に力を込めた。
「咲夢さん、起きなくていいの?咲夢さん!」
「ほわっ!なになに、今何時!?」
咲夢さんはガバッと勢いよく起き上がって誰に問うでもなくそう言って辺りを見回す。
その視線はしばらくは虚空を彷徨っていたものの、急にピタリと止まると、俺の方を振り返った。
「はよーっす。よく眠ってたね。」
「え…?私…寝てた?」
「うん。そりゃあもうぐっすり。」
「う、うるさかったりは…?」
「あー…寝言はけっこう言ってたな。」
そう言うと、咲夢さんはさっき(スカートがうんぬんの時)のように真っ赤になった。
「な…なんて言ってた?」
「何回も、『奏太くん』って、言ってたな。」
咲夢さんは下を向いて、顔を隠した。
「咲夢さん、大丈夫?」
「うん…大丈夫。」
全然大丈夫そうじゃないのに、咲夢さんはそう言った。