秋桜が散る前に
「奏太は、いつも話してた。」
秋くんは歩きながら、ポツリポツリと話し始めた。
どこか遠くを見ながら、いつものゆっくりした口調で。
「咲夢さんのこと、孤児院のこと、千歳さんのこと…」
「それ、この前も聞いたよ。」
私がじれてそう言うと、秋くんは困ったように笑って、そう?と言った。
「とにかく、奏太はよく俺に咲夢さんの話をした。それで、ある日いきなりカミングアウトして来た。」
「かみんぐあうと…?」
「あんたが好きなんだって。」
頭を打たれた気がした。
強い衝撃に歩いていられなくなる。
一馬が不満そうにサクねえと呼ばなければ、そのまま動かなくなったに違いない。
奏太くんが…?
「大丈夫…?」
「う、ん。大丈夫。」
私はなんとかそう答える。
泣くのは後だ。
今は早和と一馬と七瀬がいるんだから。