秋桜が散る前に
私は足を無理矢理動かして歩いた。
子供達の歩調は遅く、もう『ガブリエル』は見えているのに、なかなか着かなかった。
秋くんは、ずっと黙ったままだった。
「じゃあ、よろしくお願いします…」
「咲夢ちゃん?体調でもわるいの?」
「いいえ、大丈夫、です…」
私は『ガブリエル』にいたボランティアさんに皆を預けると、くるっと門まで真っ直ぐ向かった。
そこで、秋くんが待っているはずだから。
私は渡された封筒をくしゃくしゃになるまで握っていた。
「それ、読まないの?」
門に寄り掛かっていた秋くんがそう聞いてきた。
「読む…?」
「やっぱ、まだ無理?」
無理?何が?
私は何にかは分からないけど、無性に腹が立って、封筒をちょっと乱暴に開けた。
便箋には、つめつめに書いたいっぱいの黒い文字。
穂高 秋様…―