秋桜が散る前に
―秋なら、信頼できると思って、この手紙を送った。
空は、きっと間合いなんて読みやしないしな。
秋、俺は、もうダメらしい。
そもそもの発見が遅かったし、この病気と闘う体力も、もうない。
ずっとベッドで寝たきりの生活。
もう自分でもダメだって解ってる。
だから、お前に頼みたい事があるんだ。
咲夢を頼む。
あの子は、俺の大事な女の子だ。
ずっと一緒だった。
泣き虫で、聖母のような、俺の好きな女の子だ。
きっと、俺の死は咲夢を縛る。
うぬぼれかもしれないけれど、俺と咲夢はずっと一緒だったから、多少なりとも俺は咲夢を縛ってしまうんだろう。
だから、秋、俺がもし死んで、ちょっと咲夢が落ち着いた頃をみて、伝言を伝えてほしいんだ。
俺の最後の祝いの言葉として、『受験成功おめでとう。』
これだけでいい。
伝えてくれ。
あぁそう。俺お前に懺悔しなきゃいけない。
あの日、咲夢を初めて見たって話してきたお前見て、あせった。
だから、あんなこと口走った。
俺はお前を牽制したんだ。
まぁ、そういうことだ。
それじゃ、後の事はよろしく頼む。
奏太