秋桜が散る前に
「だ、か、ら、付き合ってねぇんだって。単なる友達。」
「男女に友情なんか成立しねぇぞ!」
「俺が奏太の女を取るかよ。」
「えっ、まじ?奏太のだったの?」
「さっきから人の話を聞いてないからそうなるんだよ。」
「待て、だまされないぞ。あの堅物に女なんていたわけないだろ!」
マシンガンのようなトークバトルが目の前で繰り広げられていく中、あたしは完璧に出遅れていた。
いつも繰り広げているんだろうこのトークバトルの中に、奏太くんが割って入っていたのは間違いないだろう。
あれ…?奏太くんのこと、今久し振りに思い出したような気がする。
ってことは、私、あんまり奏太くんのこと、考えなくなってる…?
いつからだっけ?
「だから、咲夢さんは今からバイトなんだってよ!時間無いから、また学校でも説明してやっから。」
「絶対だかんな!」
「あーあーはいはい。」
恨めしそうに去っていく空くんに向かって、秋くんは溜め息をついた。
「わりぃ、咲夢さん。あいつはいつもああやって落ち着きがないんだ。」
そう言いながら、秋くんはまた溜め息をついた。