秋桜が散る前に
そう響いたのは明るい声。
そして、私を上からのぞきこんだその顔は、ヒドく童顔だった。
「そっ、空くん!?なんでここに…?」
「サクラちゃんこそ。ここでバイトしてたんだ。」
「うん…まぁ…」
ってそうじゃなくて。
「なんでここにいるの?空くん。」
私がそう言うと、空くんは周りをキョロキョロ見回して、
「歩きながら話そう。人目があると面倒なんだ。」
そう声を潜めて言うものだから、私は大人しくゴミ袋を掴んで階段を降り始めた。
そうして、空くんはポツリと言った。
「このビル、俺の父さんのなんだよね…」
「えっ…」
嘘…
だって、このビルを使っている会社は『シャイニースカイ』。世界的なIT企業だ。
ってことは…
「しゃ、社長子息…?」
「いや、そんなたいしたもんじゃないんだけど、兄貴もいるし…」
せ、セレブ…マジもののセレブだ…!