秋桜が散る前に







「成瀬川…サクラ…さん?」




教会の前にある大きな桜の木の前で、


舞い散る花びらの中、突然私は話しかけられた。



―あ、この人、奏太くんと同じ制服…



知らない人に話しかけられているのに、奏太くんの事が真っ先に頭に浮かぶ。



違う。


同じ制服って言うのもあるけど…



桜吹雪の中に立っているその男の人は、よく見たら奏太くんとどことなく似ていた。




「奏太…くん?」




思わずそんな事まで口走ってしまうくらいに、彼は奏太くんと似ていた。

外見とかじゃなく、彼の出す雰囲気とか、そういうものが。



でもさすがにハッとしてかなり失礼な事を言ってしまった事に気がつく。



「あ、あのすいません!あまりにも似ていたからついっ…」


「え、あぁ別に気にしてない。よく言われるしな。奏太と雰囲気がそっくりだって…」


「奏太くんを…知ってるんですか!?」


「うん。俺達同級生だったからな。」




同級生…


そんな人がどうして私のことを知ってるんだろう。


奏太くんが話したのかな…




「さっき教会で賛美歌歌ってたの、サクラさん?」


「はい、そうですけど。」


「歌、上手いんだな。」



そう言った彼の口調は、悲しいほど奏太くんそっくりで、



私は顔を見られたくなくてうつむいた。




―歌、上手いな。咲夢…―





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