愛 理~airi~
布団に隠れて傷口は見えないだろうが、所持品はきっと血まみれだったに違いない。
ズキズキ痛む傷口は元より、話し辛い酸素マスクをしてる現状さえ痛々しいのだから。
“輸血もあと少しで必要だったんだぞ”と言われては、菊池の顔も致し方ないな…。
ただ…こうして話を聞いて行くごとに、またひとつの不安がプラスされたのも事実だ。
「…なぁ、メアリーは?」
「…え?」
抱いた疑問は昔から解決しないと済ませない性格だから、ズバッと尋ねたのだが。
「彼女は、どうなってる…?」
「・・・」
それは今は言い難い…――とでも言うように、チラチラと視線を泳がせている菊池。
「菊池」
大丈夫、俺はすべて受け止められる…――と窘めるように、目の前のヤツを呼べば。
バッドタイミングと言うのだろうか。トントンと、部屋のドアのノック音に阻まれた。
明らかにホッとした表情で見返してくる菊池だが、ヤツの言葉で目を丸くする事になる。
「おっ、奥さんたちじゃないか!?」
「・・・え?」
「あれ?悪い!言って無かったな…。
奥さんたち、昨日の便で駆けつけて下さったんだよ」
そう言い逃げてドアへ向かった菊池を眼で追い掛ければ、愛しい子の姿を捉えた…――
【#二十 再 会★終】