愛 理~airi~


俺が異国で刺されたと一報が入れば、きっとこんな生ぬるい痛みでは無かった筈だ。



よく分からない情報だけが入って、よけいに心細さを助長させたに違いない。



ああ、もう俺の命は自分だけの物ではないんだ――…




「…亜実ちゃん、真咲。お願いだから、ここへ来て?」


「ん、はい…」


「ありがとう」


コクンと頷いて立ち上がってくれた真咲と、ようやく笑顔を見せた亜実ちゃん。



ズキズキと走っていた痛みも、この2人に会えたお陰で和らいでいくようだ。




「大和くん、だいじょうぶ?」


「うん、すぐに元気になるからね」


「よかったぁ。亜実もげんきでいるからね!」


「…ありがとう」


刺された時の痛みより、麻酔が切れたあとの痛みより、はるかに苦しい。



ここに守るモノがあるから、自分の命がなおさら惜しいと思えてしまう。



< 104 / 122 >

この作品をシェア

pagetop