愛 理~airi~


いつも強がって、弱さを見せないからこそ、その苦しみを取ってやりたいのに。



まだまだダメだな…泣かせて心配させたのが、誓った筈の自分とは――




暫くして落ち着いたのか、傍らにあった酸素マスクを手にして装着してくれる。



“ムリしないでよ”と付け加えるのは、世話焼き上手の奥さんらしい。




「大和…、ありがとう」


「――え?」


突然くれる言葉に目を見張れば、目を優しく細めて微笑んでくれたが。



「私は、昔の事は何も聞かないよ?

大和がこうして…、生きているだけで、もう良いから。だからね…」


「ちょ、ちょっとストップ…ッ!」


そう話しながら切なげに笑うものだから、俺は酸素マスクを取り去って阻んだが。



「や、大和、大丈夫!?」


「ああ、わるい…」


お腹に力を入れたせいか、ズキンと痛んだ傷口に思わず顔を歪めてしまった。



しまった――また真咲は、こんな時に話した自分のせいだと責め立てるのに…。



 【#二十一  安 堵★終】



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