愛 理~airi~


五体満足に動ける事へのありがたさは、病気になった時に改めて思うというが。



ベッドから動けそうもない自身の不自由さが、本当にソレを痛感させられる。



守りぬくと言いながら、彼女の手を借りなければ水分すら補給できなくて。



バタバタと忙しい日常を、当たり前と思っていた自分の愚かさを知った…。



「――それじゃあ、メアリーさんは…」


「ああ。話した通り、俺にとっては同僚なんだ。

でも、ずっとハッキリしなかった事で、結局は彼女を深く傷つけてしまったんだ。

真咲を心配させたし、ただただ彼女にも申し訳ない…」


「…大和」


「ごめんな…」


今まで彼女にあまり話さなかった、入社してからメアリーや日野たちとの毎日。



軽く話す程度はあっても、同業種だからと遠慮していた部分があったのもまた事実。



それは“鉄の女”と呼ばれる真咲に、私生活まで仕事の話を持ち込む事が憚られて。



優しさと決めこんでただけで。結局は、さらに真咲を傷つける結果となってしまった。



――優しさなんて甚だしい。ただの勝手なエゴだったクセに。



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