愛 理~airi~
結婚前までの俺の朝食といえば、眠気覚ましのブラックコーヒーくらいで。
こんなにも穏やかに朝を迎えられるのが、いつ以来かさえ分からないほど。
一緒に住み始めて間も無いのに、もうこれが当たり前になっているらしい・・・
「ねぇ、大和は急がないで良いの?
今日って確か、週一回の朝イチミーティングでしょう?」
亜実ちゃんとともに朝食を取っていると、真咲がようやくキッチンから戻って来る。
「そうだけど、真咲の方が始業開始早いだろ?」
週一回の割合で、朝イチに行われるミーティングは営業部全体で行うもの。
確かにソレなりの位置に居る身としては、急がなければならないだろうが。
「やっぱり日本企業だしねぇ。
あ!でも、早く行った方が良いよ」
俺の問い返しに笑いながら、ゆっくりコーヒーを飲んでいる彼女を見ていたい。
…なんて言ってしまえば、仕事命の奥さんに怒られそうだから言わないけど?
「そうだな…、じゃあ準備するよ」
「うん、準備してあるからね」
「サンキュ」
名残惜しくも頷いてから笑えば、柔らかな表情を窺えるだけで心が穏やかになれる。