愛 理~airi~
身支度をする為にクローゼットへ向かえば、今日のスーツが用意されていた。
グレーのスーツに合わせて、今日のネクタイはネイビーのストライプ模様だ。
ソレを慣れた手つきでササッと巻いて、マナーであるヘアの乱れ等を最終確認する。
どうしてか不思議だけど、真咲に柄を選んで貰うと仕事が捗るような気がして。
朝の僅かな時間も然り…、一日の仕事の出来のバロメーターになっているとは。
大切すぎる姉妹のお2人はそんなコト、まったく知らないだろうけど・・・
「大和くん、行ってらっしゃい」
「ありがとう、亜実ちゃんも頑張ってね」
全ての準備を終えて革靴に足を通せば、亜実ちゃんが笑顔で見送ってくれる。
そんな彼女が可愛くて、屈んだ俺が頭を撫でるのもすっかり日常の風景のひとつ。
「それじゃあ行って来ます、ムリするなよ?」
亜実ちゃんの頭を撫で終えると、立ち上がって必ずこの言葉を掛けるのもそうだ。
「うん、ありがとう。大和も無理しないでね?
気をつけて行ってらっしゃい…っ、ちょっ!」
大切で心配な奥さんの頬を捉えて、チュッとリップ音を立ててキスを落とした。
「フッ…、おまじない。行って来るよ」
「っ、大和…!」
不意打ちに眉根を寄せる真咲だが、新婚のせいにして許して貰おうかな…?
【参 風 景★終】