愛 理~airi~
#四 惚 気
営業の人間は直で客先周りへと向かったり、そのまま直帰する事が多々ある。
俺も例外ではないが、会議に書類の申請や決済等に追われるのが常で・・・
「かしこまりました、それでは明日お伺いさせて頂きます。
はい、では失礼いたします…」
ツー、ツーと通話終了音が聞こえてから、フゥ…とひとつ息を整え受話器を置いた。
手にしていたペンで、ササッとスケジュール帳へさっきの用件を書き込んでから。
作成途中だったリース物件の資料を片す為に、ノートPCにログインしていると。
「川崎ー」
ヤケに気の抜けた声に呼び掛けられ、思わず金額入力を間違えてしまった。
「…何だよ?」
フゥ…と重苦しい溜め息をついて、席を挟んだ向こうで笑うヤツに答える俺。
「俺ん時だけ、いつも冷てーなぁ。
“社内で上司にしたいナンバー1の川崎さん”が良いのか?」
「何だ、その怪しいナンバー1…。
大体今さらだろ…、で、何?」
意味不明なランキングを持ち出した、暑苦しさ全開の男に呆れるのも無理はない。