愛 理~airi~


今日は暑いから冷やし中華を作ろうかなと、通勤時に彼女が言っていたな…。



「ハァ…、真咲に連絡しとく」


明らかにワザとだと伝わるように、盛大に溜め息をついてから携帯へ手を伸ばせば。



「さすが、大和魂!」


「ソレは止めてくれ…」


俺の名前と“サムライ魂”を掛け合わせたらしいが、迷惑すぎるキャッチフレーズだ。



梅雨明け間近の初夏の気候を、一気に真夏へと押し上げる日野に呆れるばかりの俺。




「もしもし?」


「うん、どうしたの?」


携帯電話を耳元へ近づけていれば、ニヤニヤと薄気味悪い笑顔を見せてくるヤツ。



そんな邪魔者を追い払おうと、シッシと邪険な手ぶりにプラスして視線を送れば。



「…大和?」


「ああ、仕事中に悪い。いま大丈夫?」


「うん、大丈夫よ。それでどうしたの?」


「ああ、実はさ・・・」


普段は互いの立場を分かり合っているせいか、滅多に連絡を取り合わないから。



思いもよらず聞けた柔らかな声色のせいか、自然にフッと口元が緩んでしまう。



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