愛 理~airi~
俺の声に頷きながら、バタバタと忙しなく準備を終えた部下とオフィスをあとにする。
「でも…、川崎さん大丈夫ですか?」
エレベーターに乗り込み、2人きりになると申し訳なさそうな表情を見せた部下。
「あー仕事なら問題ないし、優先事項はコッチだろ?」
「助かりました…、ありがとうございます」
「当たり前だろ――」
俺の言葉でホッとした表情に切り替わって、もう一度頭を下げる部下に笑った…。
世界大恐慌の襲来かとまで心配された、最近の景気状況はまだ回復傾向とは言えず。
この業界でも、民事再生法の適用を受けたり、倒産する企業も多くなっているのだ。
ちなみにGELとしても、リース債務から逃げられてしまうなどの被害を受けるから。
「粉飾決算か、やっぱり…」
「川崎さん、…見抜かれていらしたのですか?」
「うーん、勘だけどね?」
営業に就く者として会社に損害を被らせないよう、見極めや選択も大切なのだ・・・