愛 理~airi~
だから営業ノルマを達成するより、長く付き合える企業の力になれたらと思う。
せっかく工作機械を販売出来たとしても、使って貰えないのでは意味が無いし。
財政状況に苦しむ企業にプッシュすれば、ソコで関係も断たれてしまう難しさがある。
厳しい不況だからこそ、この課題に掲げてお取引先の情報収集に余念が無いのだ・・・
「本当に、川崎さんに行って頂いて良かったです。
じゃなきゃ、A精機のお仲間さんにまで辿りつけませんでした!」
「ハハッ、それはどうも」
千葉県にあるA精機へ尋ねた帰りの電車内で、部下は心底ホッとした顔を見せた。
そんなA精機にリース契約で販売するハズだった、マシニングセンターの件は。
A精機の担当者からの紹介を受けて、大手のB製鋼へと販売先をすぐに変えられたのだ。
ソレは偶然にも、以前俺が担当していた企業のひとつだったせいもあるけどな…。
「あの、川崎さん…、このあと飲んで行きませんか?」
帰宅ラッシュを終えた都内へと戻る電車内は、比較的空いているというものの。
そう誘いをかけてきた部下とは、どうしても触れてしまう距離間しか残されていない。