愛 理~airi~


今日俺が同行していた子は、入社3年目となった部員の女の子だけど。



「…申し訳ないけど、朝倉に行く用事があるんだ」


「え?朝倉、ですか…?」


自分の求めていた答えとはまるで違う、ライバル社の名前に目を丸くしている。



「そう、奥さんのお迎えにね」


「あ、ああ…、奥様の…」


結婚式には出席していない彼女には、結婚の話しかしていないから余計なのだろう。



「だからゴメンな。

今度、部署の皆で飲み会しよう?」


誘いから逃げるのはいつもの事だが、以前とは理由がまったく変わっていた。



大切な真咲と亜実ちゃんがいるから、誤解されるような行動を取りたくないのだ…。




「…奥さん良いですね…、羨ましい」


「ハハッ、ずっと彼女には敵わないだろうな」


「えー、川崎さんがですか?」


惚れ込んでいる真咲たちが、実は俺の一番の弱点だとは言えないけどな…?



「そうそう…、あ、じゃあお先に!」


「…はい、お疲れ様でした」


真咲の会社の最寄駅への到着アナウンスを聞いて、俺は一足先に電車を降りてしまう。



< 35 / 122 >

この作品をシェア

pagetop