愛 理~airi~
今日俺が同行していた子は、入社3年目となった部員の女の子だけど。
「…申し訳ないけど、朝倉に行く用事があるんだ」
「え?朝倉、ですか…?」
自分の求めていた答えとはまるで違う、ライバル社の名前に目を丸くしている。
「そう、奥さんのお迎えにね」
「あ、ああ…、奥様の…」
結婚式には出席していない彼女には、結婚の話しかしていないから余計なのだろう。
「だからゴメンな。
今度、部署の皆で飲み会しよう?」
誘いから逃げるのはいつもの事だが、以前とは理由がまったく変わっていた。
大切な真咲と亜実ちゃんがいるから、誤解されるような行動を取りたくないのだ…。
「…奥さん良いですね…、羨ましい」
「ハハッ、ずっと彼女には敵わないだろうな」
「えー、川崎さんがですか?」
惚れ込んでいる真咲たちが、実は俺の一番の弱点だとは言えないけどな…?
「そうそう…、あ、じゃあお先に!」
「…はい、お疲れ様でした」
真咲の会社の最寄駅への到着アナウンスを聞いて、俺は一足先に電車を降りてしまう。