愛 理~airi~
同業者ならば名前は聞いた事のある、紅一点に近いヤリ手の営業ウーマン。
“鉄の女”とまで呼ばれるほど、どれほど独りで抱え込んでいたんだろうな…?
他愛もない話をしたあと、平蔵さんは俺たちを置き去りに会長室を退出してしまう。
“もう少しゆっくりしていて良いよ”と言われ、革張りのソファに身を預けていたが。
「…大和、失望してないの?」
「何に?」
「だって・・・」
思いを上手く言葉に出来ないのか、ギュッとスーツを掴み俯いてしまった彼女。
だからこそ隣に座っていた俺の手は、ごく自然にギュッと抱き寄せてしまう…。
「真咲を惚れ直す事はあっても、失望する事なんてあり得ない。
…それに、今の姿も綺麗だよ」
「・・・うそ!
だって…凄い地味だし、オマケに“鉄の女”とか陰で言われてるのよ?
そんなの見て幻滅しないなんて、絶対、ウソだ…」
俺のスーツをキュッと掴みながらも、頑固な面からかまだ納得はしていないよう。